無意識日記々

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TM NETWORKの新譜[QUIT30]の話

Twitterで何度か呟いているが、TM NETWORKの7年ぶりという新作「QUIT30」についてちょっとばかし触れておこうか。

このグループに対する思い入れというのは語るまでもない。小学生の頃Get Wildで初めてザ・ベストテンに出演した時の期待感といったらもう。結局UTSUが歌詞を間違えてガックリ来るのだが。あの番組、曲が初登場の時だけ歌詞をテロップで出すもんだから逃げ道なかったんだよね。とほほ。なんていう話はもう何度もしている。

そんなだから、松本孝弘といえばB'zのギタリストである前にTM NETWORKのツアーメンバーだし、阿部薫といえばWILD LIFEのドラマーであるずっと前からTMで叩いてた人だし、坂元裕二(漢字忘れた(笑))は脚本家である前にTMに詞を提供した人だ。そして、90年代最も有名なミュージシャンとなった(長者番付4位だぜ)小室哲哉のプロデュース業は、TMがStopしている間のソロ活動だと捉えていた。私にとっては、いつまで経ってもTMの鍵盤奏者なのだ彼は。

そんな思い入れの強さなので、どうしても辛口になる。ハードルが高いのだ。

新作「QUIT30」もそんなに悪くはない出来だったのだが、よりにもよってDISC2に1988年の名盤「CAROL」からの抜粋曲(2014年バージョン)を入れたもんだから否が応でも比較せざるを得なくなった。これが痛かった。

何が違うってメロディーの豊穣さだ。あの頃のメロディーは、音が動く度にこちらの感情が動く。まさしく「何かを完全に捉えている」旋律が満載だ。何かとは我々の心でも何でもいいが、今のメロディーはただ音符が高低差をつけて並んでいるだけ。バラバラである。

しかも、この抜粋曲たちって「CAROL」本編では繋ぎ曲、脇役といっていい曲ばかりだ。主役といえばCome on Everybody にSeven Days War にJust One Victory にと名だたる名曲が居並ぶ。いやあのアルバム本気で凄かったな。


そんな感じなので、余りのメロディーの豊かさにQUIT30の本編が霞んでしまう仕掛けになっているのだが、ラストのAliveのリミックスはなかなかいい。小室哲哉自らが手掛けたそのサウンドは、彼の引き出しの多さをよく感じさせる。サウンドリエーターとしては、多分、現時点でもヒカルより優秀だろう。

現在の小室哲哉は、いわば、料理人としては未だに一流なのだ。しかし、肝心の料理を施す材料に魅力がない。こちらとしては、「厨房に籠もってナイフ研いでないで畑まで来て土耕せよ!」と言いたい気分なのだ。昔の彼は、料理人としてだけでなく、農家としても一流だった。美味い料理を作る為の全行程において力を発揮していたのだ。今は、畑がやせ細ってしまっている…。


ヒカルの人間活動って、そういう事だったのかもしれない。彼女も、料理人としての腕はグングン上げてきていたが、12年の間に沢山作物を採り過ぎてしまっていて、もうちょっとで畑が荒れ出すところだった。それを自ら事前に察知して一旦身を引いた本能の凄さよ。そういう風に考えたら、ちゃんと畑が肥えるまでじっくり時間をかけてうただきたいなぁといつも「早く復帰を」と逸っている自分を諫めたい気分になってくる。


どこで言ってたかな、でも、小室哲哉は今までに1400曲くらい書いてきてるんだって? そりゃあ痩せ細りますってなぁ。ヒカルも、多作より質で行ってもらいたいものだ。多作かつ高品質なら、言う事ないのですけどね。贅沢だなw