無意識日記々

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bubble blue

こういう、情報に淘汰圧が掛かって情報の精度が上がっていく機構が機能しない事を「情報淘汰不全」と名付けよう。以後使わないけれども。(ならこの段落何やねん)


さて。宇多田ヒカルというアーティストは誰よりも実力派だと認知されている。あの井上陽水が飯の味もわからなくなる位緊張するというのだから相当である。しかし、その割にその実、物凄く"マスメディア依存"の商売しかできないタイプのミュージシャンだ。要するに常に人気がバブルなのである。

要因は皆の知る通りで、ツアーの本数が極端に少ない事とファンクラブが無い事だ。よって"ファンベース"なるものは他の一流と目されるアーティストたちと較べても取り分け脆弱である。本人がほぼ望んでそうしてるのだから文句はないのだが。いやライブは増やして欲しいけどね。

その為、もし新曲をリリースするにあたってタイアップがつかなければ売上は悲惨な事になるだろう。まぁ、ファンベースという点では日本屈指のGLAYも、一週間で全国で売る新曲CDシングルの枚数より一晩のライブで集める人数の方が多かったりするので何とも曰く言い難いのですがね。

試しに、ノンタイアップでCDシングル出してみたらどうなるのか、というのは興味のあるところ。ちょっと違うが、昨年の金爆のような実験的リリースだな。勿論、現実にそんな馬鹿な事をしろと言っているのではない。曲自体の宣伝を自社予算で総て賄うのは相当な負担である。CMのタイアップがつけば契約金が貰えて曲の宣伝も出来て一石二鳥。しかも、宇多田ヒカルのネームバリューが欲しい企業は2015年現在でも幾つもある筈だ。ドラマにしろTVCMにしろ映画にしろ、ヒカルが曲を出すのなら必ずタイアップがつく。

一言でいえば、テレビの拡散力に頼って曲を売ってきたのだ。もう14年前の話になるがCan You Keep A Secret?が年間1位を獲れたのは何といってもタイアップ先であるドラマ「HERO」のお陰である。全話30%超えの視聴率の恩恵は計り知れないけど。勿論楽曲も図抜けて魅力的であって、聴いてくれた人の中でCDを買ってくれた人の割合は普通に較べて非常に高い"高打率"だったろうが、幾ら打率が高くても沢山の人に聴いてもらわなければ安打数自体は伸びない。安打数=打席数×打率なのだから。そうやってヒットは生まれてくるのだ。


なんだか、悔しいといえば悔しいのだが、それが現実だ。私は桜流しをDVD20枚買うべきな位繰り返し聴いているが(いや流石に20枚は買わないけどな)、果たしてこの曲はEVAQなしだったらどれだけの売上だっただろうかとなると「ぐぬぬ」となるのだった。

それですらもう二年以上前の話。脆弱なファンベースからはどんどん人が居なくなっていく。勿論新しく入ってきてくれる人が居てそれは非常に嬉しいのだが、それ以上に人が離れている感触がある。これはもうどうしようもない。かといって今更ファンクラブを作ろうとはならんだろうし。

5年となると長い。6年となると宇多田ヒカルを知らないまま幼稚園児が中学生になっていくのだ。あな恐ろしい。


一方で、先に述べた「情報淘汰不全」の問題がある(お、使ったやん)。不全に陥ったマスメディアとこれから心中しながら、それでもやっぱりCDシングルは売れなくて(皆CDプレイヤー持ってないしなぁ)、ズブズブとキャリアが沈んでいくのだろうか。

元々がバブルな人気なだけに、逆に、ハマった時の爆発力は凄まじい。それが日本一のブランドたる所以だろう。しかし…爆発って、どうやって? 今更みんなCDシングル買わないよ。何がどうなったら「宇多田ヒカル新曲人気爆発」といえるのか、今の時代そもそも根本的な手段がない。配信だってそんなに普及していない。

多分、"特大ヒット"となる可能性がまだあるのは、スマートフォンのアプリとして新曲をリリースする事だ。それだったら、宇多田ヒカル知名度と伴走する"爆発的人気"を期待する事も、薄々ながら可能である。

勿論、アプリというからにはただ歌を入れただけではどうにもならない。何より、最初から有料というのはとてもハードルが高い。しかし、今のところ私には今のヒカルに"大ヒット"を望めるのはそれ位しかないんじゃないかという気分なのである。如何にCMが沢山流れてもドラマや映画がヒットしても皆歌にお金を出してくれるとは思えない。何かいい手は、ないものかなぁ…。