無意識日記々

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up to U, too,

例えばヒカルがクラウド・ファンディングといっても似合わない。先行投資した人たちに何らかの「優先権」を与えるのが要なのだから、なんか違う。いややるんなら私勿論のりますけどね。

…という感じで、プロ・ミュージシャンとしての"生き方"というのがさっぱり見えて来ないのだ。これからのな。つくづく、98年デビューというのは奇跡的だったと思う。きっと藤圭子のデビューも奇跡のタイミングだったのだろうな。

海外での活動には私は何ら不安を抱いていない。This Is The OneもIn The Fleshも、本人の体調以外は順調以外のなにものでもなかった。69位という順位に不満がある人はビルボード・チャートを知らな過ぎだ。私だって知ってる訳じゃないがね。

次に英語圏で活動を始めるなら、置いたバトンをまたそのまま拾って進めばよい。CDよりダウンロードになっているかもしれないが大した違いはない。日本という国が特殊なのは、大衆が音楽を消費しなくなった事であり、宇多田ヒカルの収益源はまさにそこにあったのだから。

なので、日本という国を特別視するのをやめ、数多ある国の中でプロモーションの一環として立ち寄る、みたいなスタイルだったら"生き方"に悩む事はない。この国で売れなくても、他の国で売れればいい。


こういう話を私が何度もしたがるのは、多分吉良知彦を間近に見た影響が大きい。ZABADAKの2分の1である。彼はとても"生き方"がはっきりしている。55歳を超えた今も年間80本を超えるライブを行い、新しいアルバムをレコーディングし、様々なミュージシャンたちとコラボレーションしセッションをし、妻とのユニットを前に進め、息子を立派に育て、決して多くはないファンたちの心を確実に掴んで、活動開始から四半世紀を経てなお最高傑作を更新し最高のコンサートをする能力がまだまだある。いや、ぶっちゃけ今がピークなんじゃないの? 彼のキャリアのハイライトは来年のデビュー30周年コンサートになるだろう。居ない女房を質に入れても観に行くぞ。

で、ポイントは。彼は、昔は兎も角今は全くマスメディアと関わらない活動をしているという点だ。大手レコード会社にも広告代理店にも頼らず、ファンにしろ音楽家仲間にしろ"地続きの繋がり"をどんどん手繰り寄せて音楽活動を充実させているところだ。決して演奏力や歌唱力が秀でている訳ではない彼の基に、難波弘之や渡辺等や楠均といった一流ミュージシャンたちが喜々として集まってくるのをみるにつけ、凄い才能だなと痛感せざるを得ない。そして事実彼は現在進行形で最高の曲を作り最高のライブをしている。

正直、負けてる気がするのだ。

勿論、現時点で既にヒカルは歴史に名を残しているし、彼女の与えた社会的影響の大きさは最早計り知れず、彼女は音楽業界的にはいつ年金生活に入ってくれても構わない程の貢献を成してきている(残念ながらそんな制度は無いけれど)。このあと更に吉良氏が30年頑張っても、ヒカルが12年間で成し遂げた音楽業界への貢献に追い付く事はない。そういう意味での勝ち負けは既についている。

しかし、若い時に売れて、あとは…っていうのは、どうなの?と思う。非常に嬉しい事に、桜流しまでのヒカル、WILD LIFEまでのヒカルは成長し続けていていずれも過去最高のクォリティーを見せてくれている。その点に関しては不満も不安もない。しかし、残念ながら彼女は宇多田ヒカルなのだ。レコード会社はマスメディアを使って売り出す。曲の良し悪しより歌の出来よりイタリア人と結婚したとか母親が自殺したとかいう話の方が遥かに話題になる世界に生きている。そして、そこで制作の資金を調達しているのだ。これはもうどうしようもない。


吉良さんの"地続きの繋がり"とは正反対の世界。電波を飛ばし新聞をねじ込み露出を稼いで関心を引く。そうやって得る"本当に熱心なファンの数"は多分、吉良さんとあんまり変わらないのだ。いやそれは言い過ぎだけれども、何十万枚何百万ユニットを売っても、商売としては正義だし社会的貢献度も大きいし社会的地位だってそりゃあ高いが、音楽家の生き方としては何とも。だってそれなら秋元康は偉大だなぁという話になってしまう。それは極端だと思っていたが現実の方はその極端に収束してしまった。そっちで勝負したって勝てないし、勝ったとしてもそんなに嬉しかないだろう。

なんだろう、あれだ、ヒカルには、息子や娘に胸を張れる生き方をして欲しい…のかな俺は? 昔私は凄かった、もいいけれど、たった今生きてる自分の姿が、自分の背中が、我が子にとってどう映るか。過去の実績など関係がない、"たった今の私の充実"を、見せつけて欲しい。そう願っているのかもしれない。まぁいいや、続きはまた明日書く。