無意識日記々

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旬溌力

アデルの新作「25」の初週売上が約338万ユニットなんですって。凄い。今まではヒカルの2001年作「Distance」(と僅かの差で浜崎あゆみのベスト盤)の300万枚が世界最高初週売上と言われてきたが、14年ぶりにこの記録を大きく更新した事になる。いやはや、参った。

ユニットという数え方なら“Flavor Of Life”はどうだったんだろうかと考えてしまうが、にしても今のご時世にここまでの数字が出るかね。素直に驚いてしまった。しかも、初動が総て(大抵累計の半数以上、「Distance」に至っては7割)である日本市場の話ではない。ロングセラーもありえる米国等での話だ。米国という国は、「1年経っても1週間で10万枚が売れる」市場である。「25」を実際聴いていないので作品にどこまでその力があるかはわからないが、流れを掴んでしまえば1000万枚の壁を突破しても全く不自然ではないロケットスタートだ。うーん、前作「21」の大ヒットの余韻がまだまだ残っていたのかな。例えば次にテイラー・スウィフトなりエド・シーランなりが次作をリリースしたとして、ここまでになるかというと、かなり難しいのではないだろうか。


…なんだか、最近のヒカルにはこういう話がないので、まるで遠い国の出来事だな。いやほんまにせやねんけど。世界契約を結んでいる以上ヒカルにもこういう“チャンス”は巡ってくるかもわからない。日本と違って、30代で大ブレイクするだなんてザラである(いや、まぁ天才は大体若い頃から天才なので、そりゃ10代にブレイクしてずっと、みたいな例だって多いですよ)。Hikaruがその気になれば、いや、ならなくてもこの先はわからない。

しかし、そうだとしても今は全然関係の無い話。まずは、昔ファンだった人たちに戻ってきて貰う事、そしてそれをなるべく離さないこと、新しいファン層を開拓すること。まぁ普通。

ただ、「新しいファン層」のいちばんの候補に切り込むのがいちばん難しい。どこらへんかというと、若い頃レコードやCDを買いまくっていた40〜60代のファンである。ここに切り込めればかなりのリターンが期待出来るのだがどうにもヒカルの場合知名度が邪魔をする。この世代の音楽ファンで、ヒカルの名前は知っているけれども、まともに聴いた事がない、という音楽ファンがかなり居るとみる。「げいのうじん」或いは「藤圭子の娘」等々と思われていて、シリアスな鑑賞対象としてみて貰ってないのである。

更に或いは、「R&Bはちょっと…」という層にもイメージだけで敬遠されている。Passionやテイク5を聴かせてやりたい。更に更に逆には、R&Bファンで本格的なのを期待したのに、という層も離れている。種々のカバーやUtadaでのパフォーマンスを聴かせてやりたい。

共通するのは、名前がもう刻み込まれてしまっているせいで、皆「宇多田ヒカルの事を知ってるつもりになっている」点である。いやもうちゃんと聴いてみてと言っても、「宇多田でしょ、知ってる知ってる。」とあしらわれて終わりだ。あんたの知ってるのは名前だけでしょと言いたくなるが、名前を記憶してかつ興味が無い人は、名前を知らなくて興味もない人より遥かに攻略が難しい。でも、そこに切り込んでいければだいぶ違う。

「子ルート」というのもある。40代〜60代のこども世代にあたる10代20代に火を点けてそこから彼らの親世代にまで延焼させる。本来なら若者は若者の音楽をと世代間の分断が起こるものだがヒカルの場合「本人がもう若くない」ので自前の世代意識は無いも同然。何らかの理由でウケれば勝ちである。

この5年がその知名度を更地にする為の空白期間として機能してくれれば面白かったが、流石にまだ「宇多田ヒカルを知らない世代が出てきて戸惑った」タイプのエピソードは大きな流れを形成していない。まだそういう段階じゃあないのである。なので、名前は知ってるけどまともに聴いてくれてない層にまずはアピールしたい所なのだが、その具体的方策を論ずるのはまた別の機会ということでひとつ宜しくお願い致します。