無意識日記々

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『(road!)』

『道』を聴いた時は本当に安堵した。いの一番に「合格点」と書いたのは偽らざる本音そのものである。こういう曲が無いと作品がヒカルのアルバムとして成り立たないからだ。

その曲調は、『This Is The One』のA面のそれに近い。ヴォーカルに焦点を当て、切ないメロディーとシンプルなリズム、そしてシンプルなリフレイン。言わばヒカルの得意中の得意。サウンドをシンプルにし過ぎて物足りなさすら感じさせるところも『This Is The One』に似ている。あれだけ何度も『日本語で勝負する(英語に逃げない)アルバム』を作ったと言っておきながら一曲目からリフレインが英語なのは、制作の終盤に作詞しただけあって、それだけ他の曲の日本語詞に自信があったというのもあるだろうが、何より『lonely but not alone』というコンセプトが、そのまま英語の"叫び"となって心に響いたのだろう。ただただシンプルに、日本語で「淋しいけどひとりじゃない」というよりハマったのだ。それは今言った『This Is The One』での経験も大きかったのだろうし、この曲のもつグルーヴに呼応した結果でもあろう。実際、昨今の洋楽の中に放り込んでも違和感のないサウンドだ。ここらへんも『This Is The One』当
時の戦略に相似する。勿論、具体的なサウンド自体は、同作とは7年の隔たりの分だけの違いはあるが。

そして、王道かつシンプルなこの曲は、間違いなくLIVEに強い。シンプルさというのは特にビッグ・アーティストのLIVEにとっては重要である。アリーナ・クラスやスタジアム・クラスの会場だと、どうしたって音量が大きくなり出音が太くなる。テクニカルでゴチャゴチャしたサウンドはなかなか判別しにくい。太い音を明確に鳴らせる隙間のある位にシンプルなサウンドの方が、聴衆席の隅々にまで届くのだ。それが強いビートとなると尚更である。

更に、そこにヒカルの歌声で繰り返されるシンプルなリフレイン。『It's a lonely, It's a lonely, It's a lonely, It's a lonely, It's a lonely, ,,,』と繰り返されていくうちに、聴衆の心が歌声に巻き込まれていく様が(今のままでも)手にとるように妄想できる。どれだけこのリフレインを力強く歌い切れるかが肝だが、それは、ヒカルがこの歌詞にどれだけ気持ちを入れているかで決まってくる。思いをぶつけられる言葉。その選択は正しかったと遥か未来のLIVEを夢想しながらここに断言しておこう。

「SONGS」でのパフォーマンスを聴く限り、単線のヴォーカルでも十二分に渡り合えそうな予感がする。ブレスがストレートに難しい曲だが、今のパワフルになったヒカルならウォーミングアップ代わりにオープニングで歌っとくか位に頼もしい事を言ってくれそうな気がする。あとは、テレビではそもそも居なかった満員の聴衆に対して求心力或いは訴求力をどれだけ持てるかだ。その際に、あのユーモア溢れる『(road!)』の部分をどうするかが見もの、課題である。

果たしてマイクをこちらに向けて聴衆に歌わせるのか、或いはバンドのメンバーの誰かが合いの手のように切り込んでくるのか。一回々々の公演で持ち回るのもいいかもしれない。『今夜の『(road!)』は小森くんだからね〜!(笑)』「いやヒカルさん僕ステージに居ないっすよ!(泣)」みたいな感じでひとつ。何しろこの曲『道』にとって『(road!)』は"タイトル・コール"なんだから重要っすよ。

しかし、最初歌詞のない状態で聴いた時は全然聞き取れなくってね、『(road!)』。確かに『Its a』って不定冠詞aが入ってるように聞こえるのに後に続く名詞が見当たらないなぁと思ってたのよね。あんなに小さく『(road!)』って言ってたとは。全く小さく前に倣えじゃないんだからもっと目立っといてくれよそこは。(意味不明なツッコミ)