無意識日記々

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毎度お馴染み「換骨奪胎」のお話

『Forevermore』の歌メロが地味に聞こえるのは、全体的に"ベースラインに気を遣って"作られているからだ。恐らくこの曲は、ドラムパターンとベースラインが先に固まってその上で歌メロが当てはめられていったのではないかと考えられる。

これはヒカルには大変珍しく、画期的だ。元々ヒカルはパーカッションを中心としたベースレスなリズムパターンを曲作りを得意としている。例の「スネアの切なさ」だ。ヒカルの基本的なリズムパターンは『EXODUS』のヒカルのアレンジした方:『Crossover Interlude』と、ヒカルがアレンジしてない方:『Opening』を聞き比べればよくわかる。

そのリズムパターンから直接メロディーを導き出して作った楽曲が『DISTANCE』『光』『BLUE』などである。これらの楽曲の特徴として、兎に角サビメロに来た時の瞬発力が高い事―爆発力と言ってもいいかもしれない―が挙げられる。跳ねるようなリズムの快活さに誘われて自然とサビではメロディーも跳ね回るのだ。最近だと『道』がこの路線に近い。(少し議論があるのだがそれはまたの機会に)

また、興味深いのはそうやって成立したメロディーラインをそれを生み出したリズムパターンと切り離したらどうなるか、という実験をヒカル自身が行っている事だ。それが『FINAL DISTANCE』と『Flavor Of Life』だ。特に後者はリズムを抜いてバラードにする事で特大ヒットを記録した。どちらの曲も、オリジナルではサビの瞬発力が売りなのに対してリズムを抜いた方はじんわりとした情感を押し出した曲になっている。


『Forevermore』のベースラインはじわじわゾクゾク来るタイプだ。同じフレーズを繰り返しながら徐々に熱を帯びてゆく。従って歌メロもそれに倣って爆発力よりも集積力に偏った展開をみせる。『いつまでも いつまでも いつまでも』と繰り返されるうちに曲の力強さに飲み込まれていく感覚だ。

しかし、これはあクマでベースラインを伴った時に得られる感覚であって、もし仮に『Forevermore』が『FINAL DISTANCE』や『Flavor Of Life』のようにリズムを抜いたアレンジで楽曲を再構成したらどんな印象を与えるのか、それを想像してみるのが面白い。もしかしたら、オリジナルの『Forevermore』が苦手なファンも気に入るような出来になるかもしれない。前例に倣えば、ヒカルの事だから2つのバージョンを作ったら両方とも何らかの形でオリジナル・アルバムに収録する事が期待される。

…いやいや、i_さん。はやとちりなさるな。『はやとちり』のオリジナルバージョンは未だにフルアルバムには収録されていないぞ…そうだね、すまんかった…

…でもまぁ、期待しておこう。勿論、『Forevermore』のアナザーバージョンが仮に作られていたら、の話でしかないのですけれどもね〜:-)