無意識日記々

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show me your face at new phase

ヒカルは新作を作る度毎度判を捺したように「今回は自分をさらけ出した」「今までは遠慮して言わなかったような事も言ってる」とインタビューで答えている。嘘をついている訳ではないんだが、毎度字面通りに捉えていたのなら今頃宇多田ヒカルという人は丸裸にされている筈だが全くそんな事はなく。最近は発言自体が少ない事もあって寧ろ「何を考えているのかわからない」割合が増えているんじゃないかとすら思えてくる。

初期のファンには音楽がどうのという前にヒカルの人柄に惚れ込んで追い掛けているという人が少なくなかった。普通、優れたミュージシャンというのは庶民には取り付き難い気難しい性格だったりというケースが多く、スーパーウルトラエキセントリックグレイテストミュージシャンである宇多田ヒカルはどんなに難しい人なんだろうと思いきや気さくで優しい人だったという事実は多くの人々の心を捉えた。いやもうミュージシャンかどうかすら関係なかった。「この人は魅力的だ」と思わせた。その大元の原因が毎日のように更新されていた『Message from Hikki』であった事は言うまでもない。

復帰後もヒカルは着実にファンを増やしているが、果たしてその人間性は伝わっているのだろうか? キンタマがキレイだとか屁が臭いとか言われて「この人は魅力的だ、追っ掛けよう!」となっているのだろうか? わからん。でも、何となくだが、若いファンの皆さんも「Hikkiファン特有のノリ」みたいなものを持っているようにもみえて不思議だ。何というか、ちゃんと伝わっているものなのだな。

これが、曲を聴いて通じているというのなら、今やヒカルは『Message from Hikki』に頼らずとも自分自身のノリを伝える事に成功している訳で、なら確かに、冒頭で触れた通り「より自分をさらけ出していく」方法論が着実に実を結んでいるのだとも言える。『Message from Hikki』に慣れ親しんできた世代からすれば「今更かよ」となってしまうのは仕方がないが、何を書いても炎上案件にばかりなる今の風潮を考えると、これでよかったというか、こうするしかなかったのかな、とも思えてくる。

『あなた』を聴けば歌詞の面での新境地、"母親目線"を体感できるが、これは別に今まで隠していた自分の内面をさらけ出したとかではなく、シンプルに「新しい自分」の表現である。母親になった私はこんな風に思うようになった、それを素直に歌にした。であるならばヒカルはもうそんなに力んで自分の殻を破ろうとしなくていいのかも、しれない。ここから作風が安定していく時期に入るのだろうか。それはわからないけど新しいフェイズに入りつつあるのは間違いなさそうだ。