無意識日記々

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#裸婦抱く でのあの4曲目のアレンジ

前回ちょっと触れた「サビから始まる『COLORS』のライブ・バージョン」についてもう少し。

最初は、「あれ?メドレーになるのかな?」と思ったのだ。が、一番のAメロBメロを省いたというだけで後はフルサイズで歌い切った。確かに『traveling』がフルサイズだったのだからそこからインターバル無しで流れていく曲がメドレーになるのはおかしい。やるなら『traveling』から行かなくちゃね。

という、一風変わったライブ・バージョンだったのだが、一旦聴き終わってみるとしっかり「宇多田ヒカルライブコンサートで『COLORS』を聴いたぞ」という感触が残ったので大変満足であった。不思議といえば不思議だが、冷静に考えてみれば然もありなんであった。

まず、一番のサビ『青い空が見えぬなら青い傘広げて』からいきなり始まってもそこまで違和感がなかったのは(吃驚はしたけどね)、発売当時散々いきなりその歌い出しから始まる「WISH」のCMに沢山遭遇していたからだろう。少なくとも私は。『COLORS』といえばこのパートなのだ。曲自体のCMもそうじゃなかったっけ。そんな感じで違和感が少なかったのだ。

こうやってド頭にピークを持ってくるのは最近のヒカルでも顕著で(『あなた』とかね)そこは近作の作風に合わせている、というのもあるし、前曲の『traveling』からの勢いをそのまま引き継ぐにはこうやってガツンと始まる方が流れがいい、という判断もあっただろう。しかし、もし本当にそのまま一番のAメロBメロを省いただけの『COLORS』を聴かされ終えていたら私は「大変満足であった」なんて感想を持てなかったに違いない。場合によっては「大好きな『COLORS』が端折られてしまった」というネガティブな感想すら感じていたかもしれない。そうならなかったのはひとえに曲終盤のアレンジが秀逸だったからだ。

traveling』の勢いを引き継ぎサビから始まった『COLORS』はノリノリであった。場内もヒートアップ。そのまま二番のサビも歌い切りあの更に盛り上がる三番の、ヒカル自身が後から二小節足してよりドラマティックに仕上げたという『もう自分には夢のない絵しか描けないと言うなら』の場面でそれは起こった。それまでイケイケドンドンで攻め続けていた賑々しいバンドサウンドが潮を引くかのように静かになり一瞬ブレイクが訪れ急ブレーキをかけたようにスローテンポになってストリングスのみをバックにヒカルがそのパート『もう自分には…』の部分を歌い上げたのだ。うまい。このアレンジが、うますぎた。それまでの勢いが見事な呼び戻しを演出し、荘厳で広大な雰囲気が会場全体に一気に広がったのだ。あれには本当にやられたよ。サビから始まって押せ押せのバージョンだと思い込んでいたからより劇的だったのだ。

いわば、従来のスタジオ・バージョンと『WILD LIFE』等で披露されてきたストリングス・バージョンのいいとこ取りの編曲で、そのセンスの冴えは『UTADA UNITED 2006』のオープニングの『Passion全部載せバージョン』を彷彿とさせた。

この絶妙のアレンジにより終わった後の充実感が、たとえ一番が端折られていたとしても全然大きかったのだ。このバランス感覚よ。いやぁ、言いたかないけどやっぱりヒカルは天才だわ。もうこの時点でその晩のショウの成功は確定していたよ。