無意識日記々

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#裸婦抱く 待ちきれないよ 後半スタート

とある演出。それは突如横浜アリーナのど真ん中にセンターステージが現れた事だった。そんなとこにそんなスペースあったっけ!?

又吉直樹のショートフィルムが終わってすぐだ。間髪入れずにそれは起こった。自分はステージ向かって左手、それもスタンド席のかなり前方だったからセンターステージは右手後方で、ヒカルが現れたのに気づいたのは若干遅かった。有り得ないような響めきが自分の右側後ろから聞こえてきて「一体何があったんだ!?」と振り向いた時にはもう新しい衣装に身を包んだヒカルの背中があった。…背中!?

位置関係としては、ステージ向かって左のスタンド席前方だから、正規のステージとセンターステージと丁度正三角形を描く位置に私は居たので視認できるヒカルのサイズに変化はなかったのだが、それまで会場後方でヒカルの事を小さく見守っていた皆さんたちからしたら本日いちばんのサプライズだったに違いない。遠くに居たヒカルがいきなり目の前に現れたのだから。地鳴りのような響めきもさもありなんの演出だった。


よく考えられていたねぇ。15分のショートフィルム。皆すっかり前方舞台上のスクリーンに釘付けだった。ヒカルが着替えて移動する準備時間はたっぷりあったに違いない。そして、センターステージの出現。もともとは機材席のあった空間で、普通に調整卓が居並ぶコンサートにおいては何の変哲もない光景がそこにはあった。だからこそ油断していたのだ。ああ今回は前回の『WILD LIFE』と違ってステージは前方なんだな、センターステージではないんだなと皆自然に思っていた。だからこそ暗闇の中にヒカルの姿が浮かび上がってきた時の衝撃といったらなかった。

センターステージは非常に小さく、ヒカルがひとり上ったらそれで終わりくらいの大きさだった。バンドメンバーとストリングス隊は相変わらず会場前方のステージの上で、そこが『WILD LIFE』の時とは違う所だ。小さなステージで遮るものが何も無くヒカルの姿だけがある。照明が暗く落とされていた事も相俟って、まるでヒカルが暗闇の中にひとりだけ浮いて立っているかのような、宇宙の中に宇多田ヒカルだけが居てそこから歌が生まれてきているようなそんな少し不思議なSFファンタジー的な感慨すら感じられた。余りに、余りに特別な演出だった。

それはつまり、コンサートのここからヒカルが何にも守られることなく飾られることなく歌一本で勝負する決意の表明でもあったのだ。そうして披露された歌声は、この劇的な演出すら霞む程の強さと素晴らしさに満ち満ちたものだった…!