無意識日記々

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#裸婦抱く アンコール1曲目

場内暗転後に照明が妖しく赤くなった。すわ『Devil Inside』か!?と色めき立ったが勿論そんな事はなく(笑)、引き摺るようなベースラインの4音下降フレーズがのろりのろりと爪弾きだされてゆく。

前述していた通り、自分は『Forevermore』が始まった時点でその後の選曲が『First Love』『初恋』『Play A Love Song』『Automatic』『Goodbye Happiness』になるだろうと予想を立てていたので、余計にこの曲が始まった時には心底驚いたのだ。最初何が起こっているのか把握出来なかった程に。

『Fantome』収録のこの曲を最初聴いた時、「ロックファンとして言わせて貰えればレッド・ツェッペリンの“幻惑されて”に通じるものを感じる」と書いたけれど、だからこそこの曲のベースに被さるようにベンがギターをちらっと弾いた時には笑ってしまった。それまんまジミー・ペイジだから!“幻惑されて”そっくりだから! 彼も同じ事を考えてると知り嬉しくなってしまったがこの曲はレッド・ツェッペリンじゃない、宇多田ヒカルの曲なんだからロック・サイドに振り切れるのはあんまりよくないぞと思うかどうかのところでヴィンセント(の方だっけ?)がジャズ寄りのオブリガートを挟んで軌道修正する。そう、『Laughter in the Dark Tour 2018』公演のアンコール1曲目、『俺の彼女』のイントロダクションはスタジオ・バージョンのそれとはまるで違っていた。ロックサイドとジャズ・サイドが鬩ぎ合いながら中央をクラシカルなストリングスが歩んでいくという落ち着きながらもスリリングなサウンドが展開されたのだ。その上をヒカルの紡ぐ「落語のような」とまで評されたすれ違いの物語が進んでいく。その音像には、得体の知れない怪物がのそのそと地中から這い出てくるような迫力が纏わり憑いていた。

スタジオ・バージョンより若干悲愴感強めで奏でられる終盤のストリングス。ヒカルの歌唱はここでも揺るぎない。あとからの評判をきくに私の居た横浜2日目はかなり喉の調子もよかったようで。フランス語を交えたラインも淀みなく、いい意味で宇多田ヒカルのコンサートとは思えない雰囲気の中でロックとジャズとクラシックが均等に混ざり合ったサウンドが完成を迎えてゆく。妖しく照明と併せて、それはもう言葉を呑み込むような時間が刻まれていった。歌うかもしれないとは思っていたが、まさかアンコールの1曲目とはね。『俺の彼女』。これまた大きなサプライズでしたわ。