無意識日記々

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「出来上がったら聴かない。でも好き。」の謎

ヒカルが言う「アルバムの中で好きな曲」というのは、色々と判断が難しい。『First Love』では『In My Room』、『EXODUS』では『Hotel Lobby』、『ULTRA BLUE』では『日曜の朝』、『HEART STATION』では『ぼくはくま』、『初恋』では『Too Proud』…わかるようなわからないような。少なくともいつも「ファンの間で一番人気ではない」曲が選ばれているのは確かか。

色々と難しい、というのは、何よりヒカルが相変わらず「出来上がった曲は聴かない」態度を貫いているから。聴きもしない曲の好きを語るというのは正直意味がわからない。作り手というのは全部そうなの? 自分などは曲を書くとしても自分で聴いて楽しむ為だしこの無意識日記だって後から読んで楽しむ為に書いている。読んでつまらないなと思い始めたら辞める筈だ。確かに自画自賛は気色悪いかもしれないが、理解はできると思う。

ヒカルの場合は、プロとしての矜恃と創造や制作の過程を味わう為に曲を作っているのだろうか? ヒカルが料理を覚えたての頃、「敢えて味見をせずに」料理を完成させるのだと息巻いていたが、結果を出すことが第一義で出た結果を味わうつもりがないというか。いや、ほんと難しいなこれ。

出来た曲には誇りも自信もあるだろうしリスナーからのリアクションなんて大好物だと思うが、でも出来た曲を聴くことはしない。スタジオで飽きる程聴いたからもういいや、というのであればまだわからなくもないのだけどそれについて好き嫌いって、何なのだろう。嫌いかどうかはさておき、聴くとウンザリするものが好きっていうのも奇妙なんだな。

昔は「出来た曲は自分自身だからわざわざ聴こうとしないんだ」という旨の言い訳をしていたが、作品に自分も他人もないと思うんだがなぁ。私、自分の顔面が宇多田ヒカルだったら一日中鏡見て「美人だねぇ私」って呟いて延々化粧したりファッションショーしたりすると思うよ。自分の顔だろうが他人の顔だろうが美しいものは美しい。確かにずっと見てれば飽きも来ようがまた日を置いて眺めれば「やっぱり綺麗」ってうっとりすると思う。なお今これを書いてるのは不惑の小汚いおっさんです。

…うーん、「わざわざ聴かなくてももう全部頭に入ってるから」? これがいちばん納得のいく回答かもしれない。いちいち機械で聴かなくても自分の頭でいつでも脳内再生できるんだから煩わしい、と。それなら「出来上がったら聴かない。でも好き。」という言い方にも合点がいくかもしれない。だが、まだまだだな。またこのテーマはどこかで取り上げるとしますかね。