『ULTRA BLUE』13周年記念日。たった13年しか経っていないがそりゃもう定番の名盤だよね。必修科目。
宇多田ヒカル名義の中では売上として“底”だったので当時の評価はそこまで芳しく無かった。内容ではなく数字の評価である。しかし当時のスタッフは確実に未来を見据えていた。
このアルバムの中で最古曲は2003年の『COLORS』だ。『20代はイケイケ!』と共に世に押し出された楽曲は、アーティストが単独でストリーミング映像生配信と実況チャットを組み合わせるという画期的な企画だった。ヒカルに車一台をプレゼントとして用意できるようなスポンサードを受けられる知名度があったからこそ実現した企画だったが、世の先駆けとして十分な先進性だった。
同じく同アルバムの収録曲、CDの出荷枚数と実売数の落差として歴史的な数字を残した2005年の『Be My Last』。その一方で当時始まったばかりのiTunes Music Storeでは年間第2位の数字を残すなど、来たるべき“インターネットでの商業音楽市場”を見据えてかなりの先手を打った感じだった。当時はそれこそまだ時代が追いついていなかった。
2006年の『Keep Trying』もそうだ。auの音楽配信サービス「LISMO!」のスタートに合わせて何とCD発売前に無制限無料配信を実行し200万ダウンロードを記録する。当然、CDの売上は芳しくなかったが、ここから一年後に『Flavor Of Life』が着うたで歴史に残る大ブレイクを果たした。『Keep Trying』でガラケーリスナーの下地を耕しておいたのが奏功したといえる結果だった。
斯様に、『ULTRA BLUE』というアルバムは旧来のメディアからCD売上を云々される一方で、未来を見据えて来たるべき時代に備えた先見性に富むアルバムだったのだ。世界的にストリーミングが主流となりつつある現代において今一度この13年前の作品の在り方を再評価してみるのも一興かもしれないよ。