『はやとちり』での『部屋』はこうだ。
『そろそろ部屋から出ておいで
いつまでたっても消えないから“事実”』
これと、当時先にリリースされていた『In My Room』の歌詞を較べてみよう。
『だからdreaming of you 夢にescape in my room』
日本語に直すと
「だから君の夢をみる
私の部屋で夢に逃げ込む」
となる。
『はやとちり』ではこれに対して「いつまでも夢を見ていないでそろそろ現実を見なさいよ」と言って歌が始まる訳だ。ちょっとしたあてつけである。
『In My Room』で
『泣いて笑って傷つくのもいいけど
夢も現実も目を閉じれば同じ』
と歌えば『はやとちり』で
『つまずく姿を見られたときのように
フォローすればいいのかな?』
とまさにフォローされ、『In My Room』で
『ウソもホントウも口を閉じれば同じ』
と歌えば『はやとちり』では
『思わせぶりでは好かれてしまうよ?
嘘吐きなだけでは嫌われちゃうよ?』
という風に「なんか言えよウソついちゃだめだぞ?」と詰め寄られる。ある意味アンサーソングみたいなものだ。
なのに最後には
『夢から醒めた後にまた眠りたいよ
現実主義者にはわからないだろう』
と卓袱台を引っ繰り返してしまうのが『はやとちり』だったりする。夢にもう一度逃げ込んで現実の事ばかり言う連中から距離をとるのはフェイクに疑問を呈しながら始まる『In My Room』と本質的に同じだ。流石にヒカルもやり過ぎだと思ったのかすかさず
『随分話が違うじゃないかい』
と自分自身でツッコミを入れている。そこらへんはそつが無い。
この2曲の対比は、ヒカルの言う「入り口は広く出口は狭く」の実践のひとつとしてみることができる。全く相互いに違う態度から始まっても同じ結論に辿り着くのだから。この中でそれぞれ『部屋』と『room』がどう扱われているかをもう一度みるところからが次回、かな? さてどうなりますかねぇ(笑)。