無意識日記々

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英語リフレイン曲の作風遷移

TM NETWORKといえば、80年代「サビで大胆に英語のリフレインをぶちこんでくる」スタイルの先駆けのひとつだった。彼らの出現でシーンにはそのスタイルを模倣する音楽が溢れ……るほど当時の彼らに影響力はなかったけれど(寧ろGet Wildがネタ化している今の方が有名なんじゃないか)、後に90年代に小室哲哉自らがそのスタイルを推し進めた訳なので先駆けと言っても構わんだろうな。多分早すぎたんだろう。80年代も前半の頃はJ-popという言葉もなく、漸く浜田省吾が売れてきたあたりで歌謡曲やニューミュージックに代わる「日本のポップ・ミュージック」が出てくるかどうかという段階だった。つまり、「日本人の癖になぜ英語の歌詞を混ぜるんだ?」とか言われる時代だったのだ。ちょっとTM早かったね。

で。前も述べたようにヒカルも初期からその「英語リフレイン」を多用するスタイルだった。確かにヒカルも三大影響邦楽曲に件の“Get Wild”を挙げてはいるがTM NETWORK自体のファンだった形跡は見当たらない。しかしJ-popの歴史の頂点を極めた小室サウンドはどうしたって視界には入っていたかもしれない。

でその英語リフレインスタイルが『Fantome』で一旦激減し、また『初恋』でやや復活した。『Play A Love Song』はまさにそのままだし、タイトル曲である『初恋』もタイトルコールでないというだけでサビは『I need you』8回繰り返しだ。更に『Too Proud』に『Good Night』もある。

とはいえ注釈として述べておきたいのは、本当の意味で従来のスタイルなのは『Play A Love Song』だけ、とも言える点だ。『Too Proud』は前から述べている通りサウンドのスタイルは完全にUtadaのそれで、日本語詞の歌に英語のリフレインを混ぜたというよりは、元々英語曲だったものに日本語の歌詞をつけたという作風だ。『Good Night』も、そこまであからさまではないが同様である。そして、『初恋』のそれはサビのリフレインとはいえバックコーラスだから少し風合いが異なる。やっぱり、もう少し作風の遷移を見ないと全体の傾向は見えてこないかもしれない。

大胆に仮説を付け加えておくと、これはつまり、90年代に形作られた「J-popの雛形」から宇多田ヒカルはほぼ完全に離れたということなのかもしれない。つまり今のヒカルは、日本語を一から組み直して新たな日本語曲の地平を切り開く一方で、幼い頃から慣れ親しんできた(我々が言うところの)洋楽の手法で英語の歌詞を扱うようになっているのでは?ということだ。TM NETWORKのように日本語と英語の分業で日本のポップスの曲を形成するのではなく、日本語曲は日本語曲で、英語曲は英語曲で構成するようになっているかもしれない。『Too Proud』のような曲はその遷移過程にある曲なのかも。

となると、気になるのは、丁度1年くらい前に発売された『Face My Fears』か。日本語曲と英語曲同時リリースだからね。その点についてはまた稿を改めて。