無意識日記々

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どこまでも尖り好きな私

昔のヒカルにあって今のヒカルにあんまり無いもの……「ギラついた感じ」かねぇ。

1999年11月に『Addicted To You』を聴いた時に「随分尖った曲が出てきたな!」と思ったものだ。同時にアピアランスも随分変わりガッツリメイクになったお陰で「自然体のHikkiがよかったのに」という人達からは不評だったがあたしゃ肯定派だった。『Movin' on without you』がお気に入りだったからね。ああいうズバッと切り込んでくる感じが堪らない。少し違うが『甘いワナ』とか『蹴っ飛ばせ』も10代ならではの元気の良さだった。

尖り具合では、しかし、やはり『EXODUS』ではないだろうか。前述の『Easy Breezy』は曲調はポップだが歌詞が攻めていたし、『The Workout』なんてエロ全開でかつ『Dirty Blond Texan』とか『Born Again Christian』とかが出て来る。ライブで披露した『Devil Inside』『Kremlin Dusk』『You Make Me Want To Be A Man』の3曲の尖り具合は言うまでもないだろう。『Wonder 'Bout』のコテコテさも攻めていたし。でもやはりタイトルトラック『Exodus'04』か。16年前当時最先端だったティンバランドのビートに伝統的なフォーク(ヒカルはこの歌をテレビで歌った時にフォークギターをぶら下げていた)の世界観を歌ったのだから、いやはや、尖ってたねぇ。

その後宇多田ヒカルに戻っても『This Is Love』や『Prisoner Of Love』、更には『Show Me Love (Not A Dream)』といったキレッキレの楽曲を発表し続けてきたけれど、近作2作では少し落ち着いているようにも思える。

強いてあげれば『Forevermore』なのだが、どこかシックというか大人っぽい落ち着きがあって安心して楽しめてしまうというか。切迫感が勢い余って少し心配になってしまうあの危うさに欠けるというか。

もしかしたらこれが「大人になる」とか「親になる」とか「お母さんになる」とかいうことかしらん。いやどうだろうね。『Fantome』のオープニングナンバー『道』もなかなかに切迫感があったが、アルバム『初恋』のオープニングナンバーたる『Play A Love Song』なんかはアップテンポではあるもののどこか優雅で余裕があるといいますか。いや、それが成長とか成熟とかいうことなのですが。

あの頃の尖り具合はこれからどうなるのだろう?と思った時に、「このあと十年後位にダヌパが思春期を迎えたら」というのが頭をよぎった。そう、ヒカルが息子の視点を観察していくのならば、彼が成長して尖った10代を迎えた時に彼の視点を通してもう一度あのヒカルの10代の頃のような尖り具合がもう一度復活するかもしれないなぁ。もしかしたら『あなた』で描かれているのはそれまでの束の間の穏やかな時間なのかもしれないなぁと。少し気の長い話ではありますが。

その頃になってダヌパが17歳くらいの尖ったヒカルのフォトをみて「かあちゃんも年頃の頃はこんなんだったんだね」と言うのを想像すると可笑しい。

いや、そもそも「母親が宇多田ヒカル」という時点で思春期に尖れるのだろうか。反抗期なんて来るの?来れるの? まぁひとんちの家庭の事なのでどうでもいいっちゃどうでもいいのだけれど、子育てに悩む親御さんたちと、遣る瀬無い10代の焦燥感に苛つく少年少女たちの両方から共感を得られる歌を書いた時、またヒカルは大ブレイクしそうな気もしなくもない。ま、ロンドンに居れば幾ら日本で売れたって大丈夫だからね。Brexodusさえしなければいいんですよ、えぇ。