無意識日記々

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ages and times

特措法に基づいた緊急事態宣言とやらが発令されて5月6日まで有効なんだとか。これは5月8日の『Time』の発売日の解放感が過ごそうだな。曲調によるけど。

何の飾りもない『Time』というタイトルがまず凄いよね。どうとでもなるもの。そんなタイトルをここで使う勇気があったというのはそれなりの普遍性が宿っている自信があるのか、はたまた、自信が無いから祈りを込めてこのタイトルにしたのか……宇多田ヒカルなら前者だわな。

『Time』と聴いて自分が連想したテーマは「年齢と時代」だ。英語だと"ages and times"になるのだけど、ageも"ice age"=「氷河時代」のように時代という意味もあったりして区別は曖昧だ。まぁそれはいいや。

音楽に親しむ時この2つは重要だ。音楽が感情表現のひとつだとした時に、年齢によって人間の感情というものは変化するものだから、やはり“その時々に合う音楽”も変化していく。楽しいとか寂しいとかいう感情なら幼いこどもでも感じるだろうが、「忸怩たる思い」とか「憤懣遣る方ない思い」とか、ややこしい言い方をしたくなる感情はそれなりに積み重ねた経験に裏付けられて生まれてきているように思える。そういうものを表現する音楽は、なんだかんだ言って大人向けだ。年齢によって感情が変化するのは自然な事だろう。

感情は、他方、時代によっても変化する。例えば我々は、余りにも平和な時代に生きている為人を斬り殺すときの感情などは知らない。そうかと思えば、メッセージに既読がつくのを待っている数秒間の感情などは現代に生きていないと知り得ないだろう。基本的な所は変わらないかもしれないが、そういった僅かな機微は時代と共に変化し、また、それに合わせた音楽が欲せられていくようになる。

そして「年齢と時代の組み合わせ」である。何歳の時に何という時代を巡ったか。自分のような人間は20歳を過ぎてからインターネットに遭遇したので、それに相対する時の感情は大人のそれだった(ことにしといてw)が、今生まれてくるこどもたちにとってインターネットは最初からあるもので、そもそも何らかの感情を喚起するものかどうかすらわからない。だが、それでも次世代技術、無人自動車だとかリアルARとかを見たら、自分がインターネットに遭遇した時のような新鮮な感情を味わうことになるかもしれない。年齢と時代の組み合わせで生まれる感情は多岐にわたり、故に再現性についてはとても難しい。つまり、今心に浮かんだ感情が年齢のせいなのか時代のせいなのか、結構わからなかったりするんじゃないかなと。

『Time』というタイトルは頭文字が大文字だ。ヒカルの曲名で頭文字問題といえば当初『passion』と全小文字で表記されていた曲名が発売前に途中で『Passion』と頭文字大文字に書き換えられた事があったが、このタイトルが全小文字の『time』ではないことは、一応心に留めおいておくべきだろう。何しろ我々は20年以上、“time will tell"を"Time Will Tell"などと書かないように気をつけてきたのだから。この曲は"time"ではなく"Time"なのだ。それはつまり、ただの「時間」の事ではなくて、もっと特定の意味を込めた言葉の使い方をしているのではないかという想像がはたらき始める。そこを踏まえて、次回以降も考えていきたいぞ。