無意識日記々

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2020年5月のトリガー

鬼滅の刃」の連載が終了になった。例によって大ブレイクの理由を分析する記事が幾つか出ていて、基本的にはアニメ化が起爆剤になったという点では一致しているがそこから先はあやふやだ。如何にも新世代の作品という事で大変宜しい。歳とったおっさんどもはわからなくて正解なのだ。正確な分析はきっと今小中学生である分析屋の卵たちが将来書き下してくれる事でしょう。

で私が「鬼滅の刃」のブレイクに於いて過小評価されているなと感じているのは前に触れた通り劇伴音楽である。梶浦由記・椎名豪・石川智晶といった面々達による総力戦の迫力は正に筆舌に尽くし難かったのだが、言う程話題にはなっていない。勿論最大の貢献はUfotableによるアニメーションそのものだったが、劇伴がああでなかったらここまでの大ブレイクは無かったと断言しておきたい。それくらいにあれは凄い。

どうしてこうも話題にならなかったかといえば、恐らく、音楽がキャラクターと紐付けられていなかったからではないだろうか。いや、そうすべきだったというのではない。一般論として、BGMというのは認識の上面に浮上しづらい。名場面の台詞回しを暗誦できる人は多かろうが、名場面のBGMを口遊めと言われたら途端に難易度が上がる。余程効果的な挿入でないと明解な印象を残さない。

これが「キャラクターの登場」と紐付けられていたら話が変わる。そう、タヌパが言っていた「ダースベイダーのテーマ」("The Imperial March")みたいなヤツね。あの音楽が流れるとダースベイダーの姿を思い浮かべる人は多いだろう。一方、「鬼滅の刃」の劇伴を1曲流しても「聴いたことある気がするんだけどどの場面かはわからない」という感じになると思う。キャラクターと音楽との紐付けは、名前をつけるようなものであり、人の記憶に強い印象を残す。ゴジラの音楽なんかもそうだよねぇ。

でふと気がついたんだが、今回のインスタライブ生配信『自宅隔離中のヒカルパイセンに聞け!』って、そういう音楽とかジングルとかサウンドIDとか効果音の類が一切無いんだよね。いやインスタライブの作法からすればそれが普通なんだけど、ヒカルさんからすれば珍しい、ような? 何しろ『Kuma Power Hour』では自作のオープニング・ジングルまで作った人だ(BGMは必ずしも自作ではなかったが)。そういうのを仕込んできてても面白かったけど、まぁインスタライブだからやらないよね。もしそんなものを作っていれば、うちらはそれを耳にする度に2020年5月という1ヶ月を思い出す事になってただろうな。今んとここの記憶をいちばん掘り起こすのは、『自宅隔離中のヒカルパイセンに聴け!』のロゴマークと…もしかしたら『Part Of Your World』かな? あの歌を耳にする度に楽しそうに歌うパイセンの眼鏡姿が瞼に浮かぶ、というのはありそうな話だ。今更テーマソングを作れとは言わないけれど、こういう場合、将来何が記憶のトリガーになるのかはちょっと興味があったのでした。まる。