無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

鼻先を上に向けて歩こう

御巣鷹山の飛行機事故から35年か。坂本九が亡くなったのはこの時だった。

宇多田ヒカルがマスメディアの前に初めて登場した時に歌ったのが坂本九の「上を向いて歩こう/Sukiuaki」。単純に、日本語でも英語でも等しく歌える事を示したかったのだろうかな。或いは、坂本九のように、将来は全米一位を取るぞというU3 MUSICの意気込みだったのかもわからない。

今は全米進出云々といった力みもなくリラックスした活動ペースだ。というか、もともとヒカルはそこまで売れたかった訳でもないのかな。デビューしたての時は自分の実力なら天下が取れるぜへへーんだというノリだったのかもしれないが、普通こういう天狗な人の鼻はへし折られるものなのにヒカルの場合は周りが鼻を引っ張った。ピノキオもびっくりである。あたしゃそんなに鼻伸びないよというのが本音だったか。

『This Is The One』の時のプロモーションは順調で、アメリカのリズミック系のラジオ局では千回を超えるオンエアだった。そりゃ名門アイランドからデビューした新人なんだから注目はそれなりにあった。だが、フィジカル発売日直前に倒れた。もう随分時間が経ったから言い方を緩めるけれど、やっぱりカラダが拒否したんじゃあなかったのかな。そんなに歯を食いしばってまでプロモーションに明け暮れたい訳では無い、と。もっと自分のペースで活動したいと。

2016年に復帰後は精力的といっていいペースだ。5年でアルバム2枚にツアー1回なんだからまずまずだろう。本来のレアキャラぶりからすれば少し出過ぎなくらいでな。で感染症禍で今ハングアップしている訳だが、マイペースとは働き過ぎない事だけではない。普通なら休む時でもその気になればもっと精力的になってもいい、という意味でもある筈だ。そんなにアウトプットしたら市場から飽きられるよとかの進言もどこ吹く風にどんどん新作を世に問う時期が来てもいい。たっぷり休んでもいいし、遠慮無くリリース&ライブしてくれてもいい。それが本来のマイペースだろう。

ヒカルはプロフェッショナルなのでニーズの無いことはしない主義だ。が、ポジション的には、サブスク全体のキャパを増やす役割を期待されるのと同様、ニーズ自体を増やす事を求められている。過剰なアウトプットは寧ろ、歓迎されるべきことであって、ヒカルの強力さが地球上での「音楽を聴く習慣」をほんのちょびっと増やす事は、とてもありそうな事だと思える。

大袈裟な、と思われそうだが1998年に「上を向いて歩こう/Sukiuaki」を歌いながら登場した少女のふてぶてしさはその大袈裟がとても似合っていた。着てたのは袈裟というより合羽だったが、今あのふてぶてしさがヒカルに復活したらちょっと面白いかなとは思う。それこそ、何かの間違いで坂本九以来の全米一位をとるかもしれない。とること自体は、間違いでもなんでもなく、ただ実力の正当な評価に過ぎないのだけれども、今の流れからすればやっぱり何かのアクシデントでもないとな。……木で鼻をくくるような言い方だけれどもw ヒカルも、たまには鼻っ柱の強い所も見せてやろうぜぃ。