無意識日記々

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『誓い』をオーケストラの装いで

ん。もしかしなくても『光 -Ray Of Hope Mix -』って初CD化か。リミックスとはいえ記念すべきiTunes Store全米二位シングル曲だからこれはこれで喜ばしい。

そしてキンハサントラ8枚組での聴き所はやはり3曲のオーケストラ・バージョンになるわけで、前回触れた『光』以外にも『誓い』と『Face My Fears』が収録されている。サントラって事で元々はゲーム内で流れていた音楽。ゲーム発売日後はそれらをフィーチャーした様々な動画がYouTubeに投稿されていた訳でそういう意味では新規音源ではなく、なんだか少し混乱するのだけど一応初音源化という事にはなるはず。キンハシリーズ自体ゲームが増えすぎて門外漢の自分には何が何だかわかんないし。

で、まずは『誓い』なのだがこれはなかなかにチャレンジングな編曲だ。サビで「え?そこ半音下げるの?え??でまた半音戻すの??」という戸惑いを与えながら編曲者が構築しようとした楽想は恐らくやや軽快めなタッチでな。もとの少人数でのアレンジのオリジナルのヒカルが歌ってるバージョンは非常にスケール感の大きなサウンドだったが、こちらは現実にフルオーケストラというスケールの大きい(人数が多い)セッティングを使っているのにも拘わらず、まるでシュトラウスのようなダンス・ミュージックにアジャストさせにいったかのような音作りだ。さっきの半音上げ下げの件も、諧謔的な方向性への舵取りだと解釈すれば納得がいく。おどけた曲調ってやつだね。

そういう方向性に行ったのも、あの『誓い』の独特なリズム・パターンのせいだ。三拍子とも二拍子(6/8拍子)ともとれるリズムをメインの四拍子のに絡ませる段構え。ヒカルは如何にもオーソドックスなものだと捉えていたのだが、最初に公開されたYouTubeでの音源はその二つのリズムのサウンドバランスが意図と異なっていたのかもしれず、それを聴いたリスナーは「なんとも独創的だ」という解釈をしていた。気持ちはわかるわ。あの微妙なアクセントのズレ具合はなんだかノリにくい。

オーケストラ・バージョンではそこの所のリズムを敢えて強調して跳ねておどけるようなスタイルに転化している。ここがチャレンジングな所で、これだけニュアンスが異なってしまうと本来の『誓い』の世界観から随分離れる。それを自覚してか、更に符割を細かくしたパート(『たまにこ・らえられ・なくなる・なみだに』〜のとこね)を、このオーケストラ・バージョンではまるごとすっ飛ばしている。思い切った判断だねぇ。

確かに、オリジナルの壮大な世界観をそのままオーケストラ・アレンジするとそれを更に強調するだけでかなり似通った雰囲気になる。今まで『光』や『Passion』を料理する際は原曲とは異なる方向性を選択することが出来た。フルオーケストラにリアレンジする意図が明確だったのだ。一方、『誓い』はもともとオリジナル・バージョンが弦の調べから始まるオーケストラ向きの曲調だ。更にそこに先述の、あまりオーケストラ向きではない、楽器の音色と結びついたリズムが加わるので、なかなかに手強かったことだろう。

これは、裏を返せば、オリジナルのヒカルによる『誓い』を、本当にフルオーケストラをバックに歌ったら凄い事になることの示唆でもある。『Laughter In The Dark Tour 2018』で既に結構分厚い弦楽隊をバックに歌ってくれていたのでその威力の片鱗を既に我々は知っているのだが、かつてテレビ番組で『Be My Last』を歌った時のようにまたヒカルがフルオーケストラと共演する機会があればいいのになと願うところでありましたとさ。