無意識日記々

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『Face My Fears』もオーケストラで。

続いて『Face My Fears -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』を聴く。

これが非常にシンプルな編曲で。主旋律をヴァイオリンの独奏にほぼ任せて、伴奏も原曲と同じコードを忠実になぞっているように聞こえる。導入部のピアノも大体原曲通り。たまに装飾的な音色も差し挟まれるものの、基本的にはピアノ四重奏くらいの編成でよかったんじゃないの?と言いたくなるくらい真っ直ぐで奇を衒うところのないオーケストラ・アレンジだ。

『Face My Fears』はヒカルの単独作ではなくSkrillexとPooh Bearとの共作であった為、非常に凝ったサウンド・プロダクションが施されていた。そのイメージが強かった所為でこの曲をオーケストラアレンジしてくるとなると更に奔放な装飾で彩られるかと思いきや案外そうでもなかったという訳だ。

しかし、これがなかなかいいのである。こうやって素材の旨味を素直に前面に押し出してこられるとこの歌の美旋律ぶりがよくわかる。フルオーケストラでそういう印象を与えられるとは思ってなかったよ。

これだと、『誓い』とは正反対に、この編曲のままヒカルが歌っちゃっていいんじゃないかと思えてくる。主旋律をヴァイオリン独奏に委ねているのだから、ヒカルがそのままそのポジションを交替して歌ってしまえばいいだけだ。

先程触れた通り、フルオーケストラで演奏してる割にこのシンプルさならピアノ四重奏編成で九割方カバー出来そうな気がするので、今後ヒカルのコンサートで『Face My Fears』が披露される時にはほぼこのまんまのアレンジで来られても嬉しいんじゃあないかなと思えてきた。少数の弦楽隊と鍵盤奏者は次の通常のコンサートでも舞台上に居てくれているだろうからね。

そうやって、今回のこの『Face My Fears -KINGDOM Orchestra Instrumental Version-』でのヴァイオリン独奏をヒカルのヴォーカルに脳内で差し替えてみると、いやはや、この曲ってライブでなかなか映える、見違える曲になるんじゃないかという期待が出てきた。

どうにも、『Laughter In The Dark Tour 2018』終了の1ヶ月後にリリースされた楽曲ということでキャリアの中で「特別編」みたいな扱いをされている気がするこの『Face My Fears』。ジャケットも絵画ということで、例えば『桜流し』みたいに暫くアルバム収録とは無縁な孤立した楽曲のような捉え方をされていそうなのだが、こうやってライブ・バージョンを夢想してみると寧ろ正調宇多田ヒカルド真ん中、ライブで『Time』と繋げて聴いたら満足度倍増みたいな雰囲気だ。『WILD LIFE』の『COLORS』〜『Letters』の流れみたいな。って余計わかりにくいか。

オーケストラ・バージョンを聴いてこういう妄想がはたらいてくれるとは事前に思っていなかったのでこれは思わぬ収穫だった。なんというか、不在だからこそヒカルの歌唱の威力が身に染みるというか。それと共に旋律の強靭さ、そのヒカルの歌唱に依らない楽曲としての強さもまた、こうやってオーケストラで聴くと深く味わえる。普段のカラオケのInstrumental Versionは主旋律入ってないからねぇ。当たり前だけど。ほんと、聴いてみるもんですね、えぇ。

でも、実際にヒカルがピアノ四重奏をバックに『Face My Fears』を歌う姿を目撃できるのは、いつになるのやらなのだなぁ。(もう見慣れた日記の締めくくり方)