無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

パワーアップ

AC/DCの新作が初登場全米1位をとったというニュースは本当に、なんというか、ただただ凄いなと感慨が押し寄せてくる報だった。18ヶ国でNo.1とか? あぁみえて彼らのNo.1アルバムって少ないので、この結果は新曲の出来がよかったってことだろう。

それにしても、経緯を振り返ると信じられない。バンド創設者のヤング兄弟の片割れであるリズム・ギタリストのマルコム・ヤングの逝去、ボーカルのブライアン・ジョンソンの喉の不調によるツアー離脱(代役はアクセル・ローズが務めた)、ドラマーのフィル・ラッドの殺人教唆容疑騒動など、まぁ前作からのこの6年間容赦なくバンドは打ちのめされてきた。誰しもバンド存続は最早不可能と思ってましたよ。えぇ思いましたよ。

しかしこうやって彼らは戻ってきた。しかもそのニューアルバムのタイトルが「パワーアップ」というのだから恐れ入る。メンバーが悉く離脱していって半壊どころか瓦解全壊でパワーダウンしまくりの筈だったのにまさかのパワーアップ宣言とかどんだけ強靱なんやねんと。アンガス・ヤングの精神力はほんまに強い。不謹慎な事を言うようだが、100歳までライブしてステージ上で死んで欲しいわ。

身内の死を乗り越えて6年ぶりのニューアルバムで復活する……というストーリーには既視感を覚える。ヒカルもそういう経過を辿ったのだ。兄弟と母娘では感覚も事情も違うだろうが、打ちのめされて死にそうになってから復活したら以前より強靱になっていた、というサイヤ人メソッド(いやサイヤ人に限らず昔からあるメソッドだけど自分の世代では彼らがいちばん有名だから……)がここにもある。

『Fantome』はヒカルが言うように『二度と作れねー』作品だろう。というか、二度目があって欲しくないわな。身内がどうのこうのなんて。─いや、AC/DCは40年前、ボーカルのボン・スコットと死別して追悼アルバム「バック・イン・ブラック」、即ち「喪服を着て帰還した」というアルバムをリリースしているので追悼盤はこれが二枚目になるんだよな。そのアルバムが全米歴代2位の売上(マイケル・ジャクソンの「スリラー」の次だ)になったという過去がある。でも、40年のスパンか。色々と考えちゃうな。

っとと、これ以上話を繋げると色々と縁起でもない事になるので切り上げるけれど、人の死、身近な存在との別れは元来自然で身近なもので日常の一部の筈だ。いつ自分の番が回ってくるかわからない。そんな時に、こうやって想いが刻まれた音楽を知っているというのはほんの僅かかもしれないけれどひとつの救いになるかもしれない。誰かを喪った哀しみが途切れる訳ではないけれど、これからを生きる力を与えてくれる。自分の中に生み出させてくれる。そう考えると、音楽の祈りの力を知る事が如何に大切か。これから冬にかけて、もしかしたら感染症禍下で身近な人に何かある人が増えるかもしれない。歌を知る事を続けるのも今を生きる秘訣のひとつになるんじゃないだろうか。