無意識日記々

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鼓膜にあたるバスドラが更にもっと

最初に本予告で90秒『One Last Kiss』を聴いた際、リズムセクションサウンドについて「どこからスネアが入ってくるか楽しみだ」と書いた。結論からいえば楽曲の最後までスネアらしいスネアは入ってこなかった。その代わりにバスドラムが三段活用されて楽曲を盛り上げている。その様子を見てみよう。

もう皆さんすっかり聴き馴染んでいるかとは思うが、『One Last Kiss』はとても静かにリズムを刻み始めるところから始まる。ここらへんは『道』に通じるところがあるよね。

そこからバスドラが入ってくるのは0:37あたり、『もういっぱいあるけど』のところからだ。

そこから暫くはメロディのアクセントとして間欠的にバスドラが踏まれているのだが、ここから0:54あたりから、即ち一番サビアタマの『Oh oh oh oh oh』のところから所謂四つ打ちでバスドラが楽曲を牽引し始める。

そして1:19あたりから、即ち2番Aメロ歌い出し『「写真は苦手なんだ」』のところからベースラインが動き始める。躍動感がどんどんと増していく。

で、ここがこの楽曲のリズム構成の要なのだが、1:55あたり、つまり2番サビアタマの『Oh oh oh oh oh』のところからバスドラ・サウンドがパワーアップするのだ。まるでそこまでオフマイクで録音していたのをオンマイクに切り替えたかのような。遠くに置いてあったドラム録音用のマイクをいきなり近くまで移動したみたいなね。このヴォリューム・アップによって『One Last Kiss』は更に更に熱を帯びて加速されていく。

最初「どこからスネアを入れてくるのか」と問うたのは、ダンスチューンとしてイケイケでノれるのはどこからかという意味だったのだが、『One Last Kiss』ではどこからという区切りではなく、約2分、つまり楽曲の半分を費やして徐々に徐々に盛り上げていく手法をとった。バスドラの入り、ベースの切り込み方ともに自然で無理が無く、気がついたら鳴っている印象だ。裏を返せば、2番サビ前までは導入部なのだ。なんというじっくり感。この構成であれば、殊更スネアを轟かせなくてもリスナーをリズムに引き込んでいける。今までのヒカルの楽曲にはなかった構成だ。

キャリア22年を超えてこの段階でこういった新機軸を打ち出してこれるというのは傑出しているが、それをいきなり「7日間で1000万回再生」というライトリスナーを根こそぎ持って行けるような親しみ易い楽曲としてリリースしてきた事が何より驚きである。普通は実験的な楽曲というのは試行錯誤を繰り返して馴染んできたところでやっと大衆にわかりやすいカタチで届くものなのにこのスピード感よな。もう『One Last Kiss』は邦楽のスタンダード・ナンバーみたいな雰囲気になっている。再生回数も1240万回か今。聴かれてるねぇ。本気でリミックス・シングル検討した方がいいんでないの。前に書いたことある気がするが、リミックス・コンテストを公募しても面白いかもね。著作権的に難しいのは重々承知之助ですが。いやはや、すんごい代表曲が誕生したものだわ。まさかこんな展開が待っていようとは思ってもみませんでしたよ。