無意識日記々

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part 1 of "Da Capo ≒ Rebuild"

大体、シンエヴァのタイトル表記って「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」で、最後に「:||」がつくのよね。だから多分新劇版4部作は「序破Q:||」と書くのが適切なんだろうけどそれはさておき、この記号は何かというと楽譜でいう繰り返し記号とかいう奴で。この表記が来たら「||:」のところまで戻るというね。

そんな背景があるから『Beautiful World (Da Capo Version)』というタイトルを見た時聞いた時、どうしたってシンエヴァのタイトルと呼応しているものだと連想した人が多かった訳でな。そりゃエヴァに寄ったバージョンだろうという推測になるわいな。

しかし、だ。ふと立ち止まって考えてみると、繰り返し記号が既にあるんだからダ・カーポって必要ないんだよね。ダ・カーポは英語で言うと「from head」即ち「頭から」「冒頭から」という意味だそうで、「:||」とダ・カーポが両方書いてあったらこれ4回繰り返す事になってしまう。新劇版は4部作だからそれでいいのでは…ってそういうことじゃないんだぜよ。

つまり、「:||」にとって「Da Capo」って必要無いのよ。もっと言えば蛇足。普通に『Beautiful World』だけでよかった。

となると、なぜこのバージョンに「Da Capo」の名前が冠されているのか。ここからは妄想をより逞しくさせて書かせてもらうが、結論からいうと

「『Beautiful World』を俺が初めから再構築(Rebuild)したらどうなるか」

を実験したのがこのバージョンなのではないだろうか。それが筆者の見立てである。

凄くザックリみてみよう。

まず冒頭、アコースティック・ギターの変なコードと変なリズムから始まる。エフェクトとエコーをかけた単音をSEに従えて不穏で虚無的でややダークなムードを演出していて、ここだけだと全く『Beautiful World』は連想されない。あとから「分離派の夏」や「Piercing」を聴いて気づいたのだが、これ全くなりくんのお得意の展開だわな。映画館では全く気づいていなかったぜ。

で。そこから無調的な雰囲気を保ったままリズムも入らずにヒカルによる『Beautiful World』の美麗なコーラス・リフレインが鳴り響いてくる。まるでそこで初めて生まれてきたみたいに。で、件のアコースティック・ギターをバックにAメロを歌い始めるのだがここのコードがホント味噌でねぇ(味噌がついたと思う人と二分されると思うけど)。テンションというか、一種ある種の緊張感を伴ったまま楽曲が進行するのな。勿論協和はしていないのだが、でもあからさまに不協和かというとそうとも言い切れない…よくこんなコード持ってきたよなと。思い返せばヒカルによる8年間待望の(シンエヴァ並に待たされた訳だ)楽曲だった『パクチーの唄』が日の目をみることができたのも、なりくんがこの曲に新味のある適切なコードを見つけてきてくれたからだった訳で、やはり彼のコード感覚には独特の個性と才能がある。ここは素直に感服したいところ。なお『Beautiful World (Da Capo Version)』の具体的なコード展開については検索したら解析してくれてる人がいるっぽいのでそちらにお任せします。

つまり、この冒頭は宇多田ヒカルの裸のメロディー・センス&コーラス&ビューティフル・ボイスの提示と、小袋成彬の十八番サウンドがそのままダイレクトにあいまみえた「最初の邂逅」だったということだ。まずはそれぞれの素材、それぞれの個性を突き合わせてみようというパートなのだろう。なお適宜入ってくるストリングス・パートは例によって『少年時代』で共演した坂東祐大(ばんどうゆうた)&Ensemble FOVEの皆さんだ。今回もよい仕事をしてくれている。

……ええい、長くなった。こりゃ週跨いで続いちゃうかもな。週末に新情報来たらどうしよ。そんときゃそんときか。いきあたりばったりで参りますよ。