無意識日記々

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『ん〜んん〜』

鼻声の何がいいって、それがとっても「エヴァっぽい」からだ。

もしかしたらDa Capoでのヒカルの歌唱が鼻声になってしまったのは(前回推理したように)不可抗力だったのかも知れないが、結果それは幸運だった。

『Beautiful World』のオリジナルがリリースされた2007年当時もちょっとだけ言われてたのだ、ヒカルのほんの少し少年っぽい声の出し方が「なんとなくエヴァっぽい」と。

人型兵器で人造人間なエヴァンゲリオン自体の話ではなく、声優さんの声質の傾向の話だよ。まず碇シンジ役の緒方恵美が少し鼻にかかった声の出し方をしている。これがデカい。主人公だもんね。かんだかんだでいちばん喋る。更に(旧劇版の)惣流・アスカ・ラングレー役の宮村優子が鼻声声優の代表格と言いたくなるくらい(そんな事他の人は言ってませんがね)特徴的な鼻濁音の持ち主である。綾波レイ役の林原めぐみは鼻声ではないけれど役柄上ややボソボソ喋るし、旧劇版でいちばん会話が多かったのはシンジとアスカの組み合わせだったから全体の印象として鼻声気味なのよ。声が。

ヒカルの歌声がその傾向にバッチシ嵌っていてね。流石にこればっかりは意図したものではなかったと思うが結果としてヒカルの声も「エヴァっぽい声」のひとつとして溶け込んでしまった。そんな当時の印象があるから2021年に今までで最強の鼻声歌声で『Beautiful World』のリビルド・バージョンを歌ってるのを耳にして「もってるなぁ」と思わず呟いてしまった訳だ。まぁ余談ですね。

そんな話はいいんだ。Da Capoのヒカルの歌唱をみていこう。

冒頭のフレーズはこちら。

『もしも願い一つだけ叶うなら

 君の側で眠らせて

 どんな場所でもいいよ』

既述の通り、この場面でヒカルは微妙に音程を揺らしながらフレーズごと単語ごとに陰影をつけながら歌っている。これはオリジナルにはみられなかったアプローチだ。具体的には『君の側で眠らせて』にはほんの少しだけ翳りを与えて歌い、『どんな場所でもいいよ』にはほんの少しだけ明るさを添加して歌っている。そして、前に触れた通りここでは(オリジナルとは異なり)ここの歌詞をもう一度繰り返して歌うのだが、その二回目の歌唱では『君の側で眠らせて』にバックコーラスが加わりその流れで『どんな場所でもいいよ』が今度はやや力強く歌われている。同じ言葉でもコーラスの有無やニュアンスの与え方の違いで聴き手に楽曲の展開を意識させ期待させている。毎度ながら上手いもんだなと思う。

特にここで耳を引いたのはその繰り返しの狭間に挿入されていたハミングだ。ギターのコードがそこまでのテンションを緩和してメジャーかヤツをひとつだけ挟むのだがそこに合わせてヒカルが少しばかり先んじて『ん〜んん〜』とひと節鼻歌のように歌う。これがいい。もう一度繰り返すことを示唆して「仕切り直し」の雰囲気を出す意図だろうな。このほんのちょっとの工夫で聴き手の集中力は大きく変わる。これまた巧いもんだよまったくもう…

…って待て待て、こんなペースで歌唱を味わってたら「不滅のあなたへ」の放送が始まってしまうな!?  次からもっと大雑把に行こうかな…(汗)。