そもそもなぜ『Da Capo』では終盤に『It's Only Love』を連呼する構成になったのか。オリジナルと何が違ったのか。それを理解する為には『It's Only Love』“ではない”ヴォーカル・パートに注目する必要がある。
あらためて『Da Capo』の終盤。
『Beautiful World
儚く過ぎて行く日々の中で
Beautiful Boy
気分のムラは仕方ないね
Beautiful World
Beautiful Boy
It's Only Love
もしも願い一つだけ叶うなら
君の側で眠らせて』
オリジナルにはない、『気分のムラは仕方ないね』と『もしも願い一つだけ』の間に挿入された『Beautiful World/Beautiful Boy』のコーラスパート。その後に『It's Only Love』が登場するのだが、歌詞の記述を目で見ていると見落としてしまう『Beautiful World/Beautiful Boy』の“/”とところにもヒカルの“歌”があるのだ。
4:15〜4:20、『Beautiful World』のコーラスの直後に『ん〜んんんん〜んんんん〜…ぅうぅぅぅうっ』というヒカルのハミングが入る。…ひらがなで書き起すの難しいなぁ! まぁ聴いてうただければわかるだろう。このあとの『Beautiful Boy』の後に『It's Only Love』が入ってくるのだが、ここのメロディがこの『んんん〜…ぅうぅ〜…』のハミングの節回しをベースにしたものになっているのが要点である。
要は、オリジナルにない部分に『Beautiful World/Beautiful Boy』のコーラスを入れた為、そこに当て嵌る歌詞がそもそもなかったから「間をもたせる為に」ハミングと『It's Only Love』が挿入された、というのが単純にして明快な理由だったりするのだが、ある意味ここはオリジナルのリベンジということもできる。
というのは、前回もちらっと触れた通り、『Beautiful World』のオリジナルではアウトロに左右に散らされた『It's Only Love』のアドリブが入っているのだが、どうにもこれが聴き取りづらい。ヒカルとしても、この曲のテーマフレーズとして書いたこの一節が終盤のラストでもっと輝いた方がいいと後々判断したのかもしれない。
2009年の破でのアコースティカ・ミックスでもオリジナルと同様に聴き取りづらいミックスだったが、2010年のコンサート『WILD LIFE』に於ける『Beautiful World』では、オリジナルのようにフェイドアウト出来る訳では無い中で、一頻り掛け合いをした最後の最後にブレイクして『It's Only Love』と呟いて〆るという鳥肌モノの展開をみせた。やはりこの曲は最初と最後に『It's Only Love』が鳴り響いてこそだったのだ。
で。『Da Capo』では曲の冒頭に於いて『It's Only Love』で口火を切れなかったので曲の最後に纏めて歌われたという感じになるだろうか。二人によるアレンジの経緯はわからないが、『気分のムラは仕方ないね』のあとのコーラスパートに“隙”をみつけたヒカルがすかさず放り込んできたように思われる。というのも、最初のパートが、上述のようにただのハミングから入るからだ。隙間を埋める為のアドリブの延長線上に『It's Only Love』が“再び生まれた”(Rebirth)のだと捉えることが、出来るかもしれない。
そういった流れを踏まえた上でこの最後の『It's Only Love』6連発を聴き直してみると更に味わい深くなる。作り手側の見方を知るのもたまには悪くないだろうさ。
…あれ?細かくひとつひとつみていくつもりがそれがまた次回に繰り越しになってしまったな。全く、毎度ながら&我ながらやれやれだわ…。