無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

Love7

さて、やっとだな。Da Capo最後、都合7つの『It's Only Love』をみていくことにしますか。

最初の『It's Only Love』(4:23〜)は前に指摘した通りその前の節、『気分のムラは仕方ないね/Beautiful World』と『Beautiful Boy』の間で歌われているハミングの、特に『Beautiful Boy』直前のメロディをベースに展開される。ここのハミングの仕方がまるで「駄々を捏ねる」ような「わがままを言う」ようなニュアンスである所が肝だ。この歌い方をベースに『It's Only Love』を歌うことで、まるで願うような少し不安げに問い掛けるような雰囲気を醸し出す。いわば「愛…だよね?その筈だよね?」とでも言いたげな、そんな歌い方になっている。

2つ目の『It's Only Love』はそこから暫く経った4:48の場面。直前にここでも『uh〜uuh』とアドリブが入る所に注目。要は勿体ぶっているのだ。この歌のテーマだからね。最初の方(2:41〜)で一度歌ったっきりで、さっき前フリ気味に違うメロで歌ってここでやっとオリジナルの言い回しで歌えるのだから勿体つけたくもなる。ここは、『そう、愛だよ!』と力強く宣言する場面だな。

3番目の『It's Only Love』(4:56~)は2番目のそれを補強するような、念押しするような歌い方だ。同じ動き方をしながら『Love』の語尾を上げて更に強調する。「そうだよな、愛だよなぁやっぱり。」とでも言いたげである。

4番目の『It's Only Love』(5:05~)は、『Only』で少しばかり苦しげに声を出して『Love』で緩めてエアを入れる、所謂宇多田ヒカルが「切なさ」を表現する時に用いる十八番の歌い方である。「愛っていいね…」と少し涙腺に来るような胸を締め付けるような感動や感激や感慨と申しますか。

そして5番目の『It's Only Love』(5:10~)が白眉なんだな。ここのところをことのほか“優しく”歌い上げる。こここそが『Beautiful World (Da Capo Version)』最大のハイライトだろう。総てを受け容れてくれるような優しい優しい『It's Only Love』。「うん、愛だね(にっこり)」みたいな感じだろうか。ヒカルらしさが最もよく出ている一節となっている。

そして6番目の『It's Only Love』(5:16~)は4番目と同じく切なく歌い上げるパートなのだが、『It's』の入り方、頭の拍がほんの少しズラされているのがいい。少しずつ歌の流れを切り上げていく感じというか、終わりが近い事を予感させる。

7番目の『It's Only Love』(5:22~)は『Love』を短く切っている所がポイント。ここで表現されるのは「儚さ」である。「愛、だったよ……」とそれが少し通り過ぎた過去になっていくかのような効果を狙っている。即ちここで曲が終わるよと一言添えるような感じだろうか。ここまでの長い長い道程を振り返るかのようだ。

てな具合で、ここの7つの『It's Only Love』はそれぞれ

『愛……だよね?』

『愛だよ!』

『愛だよなぁ。』

『愛だわ…』

『愛ね。』

『…愛、だよ…』

『…愛でした…』

という感じになっていて、当然の事ながら曲展開に沿って総て歌い分けられているのでありました。いやはや、美事に全部違うんだもんなぁ。何度も堪能し甲斐がありましたとさ。ヒカルの声を細かく細かく聴き入っていくって、本当にいいもんですねっ!