先週ヒカルが非常に珍しくタイアップ先のオンエア約二時間前に告知ツイートをしたのには驚いたが、その口調がやたら軽いのにもまた面食らった。というのも、こちらとしては作品が第一話から主人公みたいな人が死ぬというとても重た苦しい展開から入るのを知っていたからだ。なんでそんなウキウキなん?と。もちっと作品のテイストに合わせたりするは気なかったん?と。
「不滅のあなたへ」の原作漫画を読み進めていくうちに、その軽さもなるほどなと合点がいくようになってきた。多分、ヒカルはこういう世界観が「居心地がいい」のだと思う。作者の……いや作品自体の想像力が暴走していくこの感じが。
この無意識日記はできるだけヒカルの思考や感情をエミュレートできたらと思って書いているが、これがまぁ大変で。ヒカルの思考過程をエミュレートしようとしたら脳内負荷が恐ろしいことになる。昔英文メッセを「もしヒカルがこの内容を日本語で書いたら」というコンセプトで邦訳していたがその疲労度たるや凄まじかった。脳を削り取っている感じだった。時に軽いノリさえ感じさせるあの親しみ易い文章が如何に考え抜かれて紡ぎ出されているのかと空恐ろしくなったものだ。
「不滅のあなたへ」にも同じような感触がある。「フシという主人公の設定が秀逸」と再三再四指摘してきたが、彼(今風に言うとtheyになるのかしらん)を中心にして物語を展開させるとその豊穣さが留まるところを知らない。どこまでもどこまでも新しい発想が次々と生み出されていく。なので、漫画の体裁をとりながらこの作品は殆ど「挿絵と小説」の密度で頁が紡がれていく。時にコミカルでさえある絵柄ながら情報量の密度が甚だしい。最近の「ONE PIECE」みたいな感じだ。
こういう風景に、ヒカルは慣れ親しんでいる。もっといえばヒカルの脳内ずっとこんな感じなのだろう。ある意味、気の合う友達に巡り会ったような。フシが「俺に何も感じるなと?」と憤る場面などはまさにヒカルの歌詞のまんまで笑ってしまった。そりゃこのタイアップ受けるわな。いつも通りの作詞をしたら勝手にシンクロしてくれるんだもん。
もしかしたら、『PINK BLOOD』の作詞は“楽しんで”仕上げられたのかもしれない。手癖口癖で書いても大丈夫なんだから気軽さは増す。勿論、実際の完成度は皆さんが既にお聴きの通りであって何ら隙は見せてはいないが、舞台裏は清々しい充実感で満載だったのかもわからない。こうしてみると、謎めいた『PINK BLOOD』というタイトルも、「響きが良かったから」とか「字面がキャッチーだったから」とかの気楽な気持ちでつけている可能性が出てきたなぁ。あたしが読んできた範囲でも相変わらず桜色の血は降ってきていないしな。まぁそこはもういいか。今宵は第2回の放送だ。いよいよ本来のオープニング・アニメーションと『PINK BLOOD』が重ねて放送される(筈だ)。映像と歌詞やサウンドがリンクさせられているかなども含めて必見と言えるだろう。「先週聴けたし録画してあるからもういいや」と見逃して後悔したりしないようにね〜。