『PINK BLOOD』の歌詞はちょいちょい変だが、代表的なのはここだろうか。
『あなたの部屋に歩きながら
床に何個も落ちる涙』
これ最初、“walking towards your room”だと思ったのよ。「あなたの部屋に向かって歩きながら」なんだと。でもそれなら「あなたの部屋“へ”歩きながら」にした方がスマートなのよね。「に」でも間違いじゃないんだけど、「へ」の方が明解かなぁと。
てことは、ここ、他の読み方に敢えてチャレンジしてみるなら、「あなたの部屋に落ちる涙」なのかなぁ?とな。
つまり、
「あなたの部屋に
(私が歩きながら
床に何個も)
落ちる涙」
という。でもこうすると『床に』と「に」が被るのよねぇ。違うところがスマートじゃあなくなる。
どっちの解釈がより適切なのか、は未来に『PINK BLOOD』のミュージック・ビデオがリリースされた時に『One Last Kiss』同様ヒカルの手による歌詞の英訳字幕が表示された時に明らかになるだろうからそれを待つことにして。
最初思った方、「あなたの部屋に向かって歩きながら」だと解釈した場合、『床に』ってのは、例えば廊下?例えばエントランス?の床になるんだろうか。なぜ「あなた」の部屋に向かう時に泣く理由があるのか。これから別れ話でもしに行くのかな。或いは、そこは「あなたの部屋」ではあっても「もうあなたの居ない部屋」だったりするのかな。それなら泣くわ。泣きながら部屋に向かう其の理由が気になるところ。
二番目に思った方、「あなたの部屋に落ちる涙」だった場合、私はあなたの部屋を歩き回りながら色んな理由で涙を流す、のかな。色々と主張したいことがあるんだろうか。泣きながら訴えることでもあるんだろうか?
『何個も』ってのも結構引っ掛かっててねぇ。ここ、「何度も」じゃあないんだよね。「床に何度も落ちる涙」だと、同じ理由で繰り返し泣いているような意味になりそうで。一方、『何個も』だと、様々な違う理由の悲しみが幾つもあるような、そんなイメージが浮かぶ。こちらだと、自分じゃなくて誰かの為に泣いているような。果たして、何か含意があるのかな。二番以降の歌詞がヒントになったりするのかな。
歌詞というのは尺が厳しく決まっているのでシチュエーションを厳密に歌い切れないケースなんかがままある。宇多田ヒカルで有名なのは『First Love』の
『明日の今頃には
私はきっと泣いてる
あなたを想ってるんだろう』
が
「私はきっと
あなたを想って泣いてる」
なのか
「私はきっと
“泣いてるあなた”を
想ってる」
なのか、という「泣いてるのはどっちだ」論争だろうか。ヒカルの意図という意味では前者が正解なのだが、後者もなかなかに面白い。歌詞なんて時に作詞者の意図すら超えて面白い解釈が出来たりするもんだから、フルコーラスもまだまだ未判明な今、好きなように幅広い解釈をして遊んでいたいものなのですよ。でも、早くフルで聴きたいよねぇやっぱ。そろそろ曲自体の情報もアナウンスしてくれて、よくってよ? 『PINK BLOOD』のフルコーラスが解禁になった暁には、私はきっと自分の部屋に歩き回りながら何個も感動の涙を床に落とすことでしょう…。