無意識日記々

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緊張と緩和の閑話

不滅のあなたへ」第5話をみて。涙無くしては語れない回だがそこは冷静に。

原作漫画を読んだ身としては、特に劇伴を使った演出が巧いなぁと。漫画読んでるだけじゃ音楽は流れてこないからね。助かったと思っていたマーチとパロナとが徐々にハヤセに追い詰められていく様を淡々と壮大に飾っていた。ほんと劇伴の強い作品だわ。

やはり、こう、一旦安心させてからの危機というのは作劇上効果が高い。そこがなだらかというか急峻でないというか、パロナが対処している様子がマーチを心身共に護る意志が強く出ていて。そこからのマーチに護られる展開というのがね。あそこは理屈より情緒でみた方がいいだろう。

そういう、脱出の緊張からの成功の安堵という緩和、更に追っ手が迫る場面でまた緊張─という緊張と緩和の起伏が音楽を伴って描かれていて、ここらへんは原作漫画とは筋は同じながら与える印象が異なっている。やはりアニメ化って面白いなと感心した次第。でも幼子が傷つく場面は、ナミじゃないけどやっぱり許せんもんがあるなぁ……。

インスタライブでのヒカルパイセンの回答も最初は緊張の話だったな。私も予めさらっとハッシュタグに目を通した時にこの緊張への対処を問うツイートは目に止まっていたので「おぉ、きたか」という感じだった。やっぱり就職面接とかの人生を左右する場面に関する質問は真剣度が違うからスルーできないよねぇ。あたしが選べと言われてもこの質問を選んでいたわ。見過ごせない。

でヒカルの回答は、最終的には「気の持ちよう」という極めてありきたりな結論だったのだが、その肉付けがこれまた巧みでねぇ。自身の経験や神経伝達物質の話、日本語や英語も交えつつひとつずつ解きほぐして、気の持ちようといいながらテアニンのサプリなどだれにとっても有用な対処法も紹介するなど、非常によく考えられた構成だった。ありきたりの展開であろうとも納得感や説得力が出るのは、昨夜のマーチとパロナの逃走劇もそうだけど、如何に話の流れを丁寧に編んでいくかで決まる。その時にアニメの方では声優の迫真の演技や作画力、劇伴の強さなどを駆使したように、ヒカルも、ひとつの質問に対する「ありきたりな結論」に辿り着く為に質問者に目線を合わせながらひとつひとつ丁寧に導いていって、流石だなと。第一問目からヒカルパイセン面目躍如であった。ほんに、やるなぁ。

やっぱり、本人も今インスタライブで緊張していると言及したのは大きかったね。まさに今目の前に実例があるのだから触れぬ道理もないのだけれど、そういう自己言及ができるのも、質問者の質問に親身になれているというか、人生の先輩から上意下達(じょういかたつ)で知恵を授けてやろうというよりは、まず同じ目線に立って始めようというヒカルの貫くアティテュードが如実に表れていて嬉しかった。

『私は鏡だ。

光の届かない場所で動けずにいる者に

手を差し伸べるのではなく、できる限り近くに自分を置く。

そして同じ景色を観る。

痛みは、誰かと共感できたなら

気持ち良いものに変わるということを知ってる。

悲しみが減るのでも世界が変わるわけでもないが、

私の中で反転された世界は確かに新しい景色に見えた。』

(↓こちらからコピペさせてもらいました感謝。

 https://gamp.ameblo.jp/smile-smile-smile-world/entry-11610578954.html )

2002年9月にリリースされたPV集『UH3+』に収録された『Deep River』の冒頭に読まれた詩である。散文詩という陶酔的な世界観で詠まれた心情を(本人も照れとるしな)、こうやって実際の他者とのやりとりで実践できるってなかなかない。そういうとこがパイセンのパイセンたる所以なのだなと痛感した問答だったわ。よきかなよきかな。