無意識日記々

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還る時代

『PINK BLOOD』のサイコロパートは『Passion』に於ける年賀状パートとよく似た機能を果たしているという話だが、直接参照すべきなのはやはり『誰にも言わない』でな。

『誰にも言わない』は楽譜上では5つのパートが5分の中に犇めきあっている大変密度の濃い楽曲だが、実際に聴いた感触はご存知の通り大変見通しがよく、あっさりしていて食い足りない程だ。よくもまぁここまで振り切ったなぁと昨年当時は思ったものだが、こうやって『PINK BLOOD』を迎え入れてみると、その振り切った手法をTVアニメシリーズとのタイアップ曲に落とし込める迄に手法を成長させてきたんだなと沁々思う。たった一年でね。

折しも…もう一昨日か、名盤『ULTRA BLUE』が発売15周年を迎えた訳だが、同作収録の『Passion』と『This Is Love』の関係性もこの『誰にも言わない』と『PINK BLOOD』の関係性に相似していた。年賀状パートを作って何とかシングル曲に落とし込んだ『Passion』で得た手法を活かして泣く子も黙るオープニングチューン『This Is Love』を作り出した。『Passion』では時間軸的に配分していた要素を『This Is Love』では空間的なアンサンブルに変換し、壮大さと切迫感という相反する要素を融合してみせた。

『COLORS』と『Eclipse(Interlude)』という2曲を軸に昼から夜、夜から昼の二つの楽曲群を配した名盤『ULTRA BLUE』は全編をリピート再生する事でその姿が完成する。いわばここでも「円環構造」によって作品の表現を達成していた訳だ。故に『Passion』から『This Is Love』に流れる事で作品の概要が把握出来るようになっていた。更にこのアルバム発売からして程なく全国ツアー『UTADA UNITED 2006』が催行され、一曲目に『Passion』、二曲目に『This Is Love』を配する事でその円環構造の威力と意義を実践表現せしめたのもまた見事だった。なおその表現は概念先行であった為最初期は生演奏の出来がほどほどでしかなかったのはご愛嬌。当時出演した「MUSIC STATION」での『This Is Love』でのパフォーマンスを観ればわかりやすい。嗚呼、丁度15年前の今日だわね。【今日は何の日宇多田ヒカル】をチェックしておいてうただければ。

これらから類推するに、アルバム、或いはいつか来たるライブ・コンサートで『誰にも言わない』〜『PINK BLOOD』という曲順が実現するのではないかという予想を立てたくなってくるが果たしてどうなるか。他の楽曲との兼ね合いもあるので即断は出来ないが、今後を期待していくにあたってのひとつの視点にはなるのではないだろうかな。