無意識日記々

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次作収録曲の生演奏再現性について

『PINK BLOOD』はライブでの再現が難しい、という話をしたが、それは『One Last Kiss』も同様で、特に後半のA.G.クックパートはヒカルがどれをメインに歌ったらいいかわからない程でな。もう全部シーケンサーに任せて舞台袖に引っ込んでもいいくらい。

最近のヒカルの曲はこの「コンサートでどう演奏するか」についてあまり頓着していないのが特徴な気がする。それが際立って見えるのは、前作アルバム『初恋』が今迄に無い程にバンドサウンドの色が濃かったからだ。

例えば『Forevermore』などは最初に聴いた時からライブでの演奏の熱気が伝わってくるかのようだったし、『夕凪』などは、皆さんがテレビで御覧になった通り、バンド・メンバーの協力があってこそ成し遂げられたサウンドだった。ヒカル自身、徹頭徹尾自分で仕上げた曲は『残り香』のみだと語る程周囲からのインプットが大きかったのだ。

ところが、『Face My Fears』以降は様相が異なる。同曲はSkrillexならではのサウンドで、どこか彼とPooh Bearの遊び場という感じのアレンジメントだった。余りライブの生演奏ででどうのという方向性ではない。彼にとっては既発音源をそのままかける場所なのかなライブ会場は。

そして『Time』。こちらはそこまで極端ではないが、このリズムをバンドサウンドで再構築するとなると別楽曲のようなアプローチが必要となるかもしれない。つやちゃんさんとのインタビューでもヒカルは『例えば、『Time』なんかは違和感が目立つ曲ですよね。従来四拍目に入るはずのスネアがちょっと遅れて入る。』なんていう風に語っていて、こういうのを人力再現するのは骨が折れるんじゃないかなぁと。

『誰にも言わない』ではパーカッションやギターが非常にオーガニックで、これはバンドでやる甲斐が有るなと思わせたが、次の『One Last Kiss』と『PINK BLOOD』は既述の通り難渋だ。総じて、家で聴くか、会場で流すにも生演奏より録音音源、というサウンドに傾いてるような感じだ。

シンプルに推理すればこれは、パンデミックによって皆でスタジオに集まる機会が奪われた為、ということになる。畢竟、ヒカルが家で単独で作業する事も増えたのだろう。それにしては小袋成彬のインプットが多い気がするがまぁそこは今日は突っ込まない事にして、裏を返せば、まだ今もヒカルがLogic Pro等と格闘しているのであれば、曲作りの真っ最中であり、この後レコーディングという手筈になる筈だ。となれば、ワクチン接種の進むロンドンにおいてなら、バンドメンバーが一箇所に集まってセッションを通じて録音や作編曲が進んでいく可能性が出てくる。件の『夕凪』のようにね。もしかしたら『誰にも言わない』の録音はちょうど端境期に奇跡的に出来たのかも分からない。2020年4月上旬あたりに。

…なんていう風に思っていたのだけど、この二週間イギリスではデルタ株の勢力が拡大していてロックダウン緩和が延期になったというニュースが。あれま。これはまたもやヒカルの制作日程に影響を及ぼしているかもわからんね。今後でてきた音源がデスクトップ・ミュージックに片寄るかバンドサウンドに傾くか、目下の所予断を許さない感じ。出来れば、昨年実現しなかった「インスタライブで他のミュージシャンと繋がってセッション」をそろそろやってみて欲しかったところなのだけど。というのも、それによって、バンドメンバーたちとのコミュニケーションの深度がわかる気がしていたから。それも、どうなるやらだなぁ。感染症禍、下半期もまだまだ世界規模で続いていきそうですね。