無意識日記々

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「ただひたすらによくみえている」

つやちゃんさんインタビューでのヒカルはいつにも増して振り幅が大きい。

『(略)私はメインストリームなもの、あまり知られていないようなオルタナなもの、昔のラップミュージック、クラシック音楽、分け隔てなく聴いてきました。全てジャンルは違えど「音楽」という認識しかなく、音楽をつくる要素は同じだし大した意味のある違いはないと考えます。(略)』

と言い切り、ラップと歌の差について

『結局メロディとリズムが関係していれば、それらは変わらないんじゃないですかね』

と断ずる。皆結局は変わらない、同じなんだ、と。一方で、

『メロディと歌詞の関係についても、元々メロディをつくったあとに文字数も考えながら歌詞を書くんですけど、母音をメインに考えていくんですね。メロディを思いついて歌詞がまだない状態で歌っている時に、だいたい母音がかたまっていって、そこからその母音に沿って言葉の選び方・置き方を考えていくので、どうしても語呂が大事なんです。イメージした子音や母音が違うと良いメロディに思えなくなってしまうんですよね。そう思うと、ラップと同じように韻を踏んだり、語呂とかがきっちり構成のあるものにしようとしてるんでしょうね。』

と語るように、自分の作る歌とラップ・ミュージックの相違点と同調点を事細かに分析済みだったりもする。大胆に同じだと思うところと、精密に差異を見分けるフェイズが同居している。

また、前も取り上げたように、音楽自体についても、

『言語の定義って何?と考えてみれば、やはり音楽も言語なんだと思います。楽譜に書き起こせるし、記号で表現できるし、言葉以上に人類に共通して伝わるもの。』

という風にその言語性について語ったかと思ったら

『実は音楽は凄く物理的なもので。波形にできるし、周波数で考えたり質感で考えたり物量感で考えたりもできる。』

とその実在的な側面についてもすぐに語れる。一見相矛盾するようにみえることもあるかもしれないが、非常にものごとの性質を多角的にみている為に起こることなのだろう。

つまり、今のヒカルは「ただひたすらによくみえている」のだ。総てに対して明晰であり迷いが極めて小さいというか。『PINK BLOOD』の『もう充分読んだわ』のラインナップに、他人の表情や場の空気や上等な小説に加えて「この世の理(ことわり)」みたいなものも入れるべきなのかもわからない。正直、完全版を読みながら「そこまでちゃんと理解しててそれを的確簡潔に表現出来るとなるとツッコミどころがないわ」と苦笑いすることが多かった。では、だとすると感想を書きづらくなるかというとさにあらず。言いたい事触れたい事が溜まりまくっていて今困ってんのよね私ね。何故そうなるかの話については次回それを書く元気があったらなっ。