無意識日記々

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黒く塗られたタイムラインを眺めながら

ザ・ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなった。享年80か。Wikipediaをみると1962年の加入以来59年間、一度もストーンズを抜ける事無くずっとその座に座り続けていたようで。ロックドラマーとしては歴代最長となる。

…と、言い切れてしまうのも、彼こそが人類史上初の「ロックバンドに正式メンバーとして在籍したドラマー」みたいなものだからだ。いや勿論、厳密な意味では人類史上初ではないだろうが、そもそもストーンズこそが「ロックン・ロール・バンド」という形態を世に広めた最初のバンドだったから。

1950年代までのロックン・ロールは、ソロアーティスト名義のものばかりだった。エルヴィス・プレスリーからしてそうだし、ビル・ヘイリー、ファッツ・ドミノチャック・ベリーにリトル・リチャードに……そもそも、ロックン・ロールにおいて器楽隊が「正式メンバー」として活動を始めたのが1960年頃だもんねぇ。それまでのジャズ・ドラマーなんかは、ソロアーティストとしては認知されていても、「あのグループのメンバー」みたいな風には言われていなかった。

ここらへんの「当たり前すぎる事情」を知らないと、今若い人がチャーリー・ワッツのプレイを聴いて「……この人のどこが凄いの?」とか言って我々老人と衝突するのが避けられない事態となる。あっさり言ってしまえばチャーリー・ワッツという人は「ロック・ドラマーという職業を作った人」なのだ。ザ・ビートルズリンゴ・スターとともに。彼からのチャーリー・ワッツに対する追悼コメントは、シンプルだったな……。

ザ・ローリング・ストーンズといえば、『甘いワナ〜Paint It, Black』で引用された「黒くぬれ/Paint It, Black」で、宇多田ヒカルファンには有名だろう。原曲ではチャーリー・ワッツの激しいドラミングが聴けるけど、『甘いワナ』でそれが再現されているかというとそうでもない、かな。そもそも、この引用、タイトルを併記するほどそのまんまじゃないのよね。歌詞はそのままだけど、メロディは同じではないしバックの演奏も違う。メインテーマとして堂々と鳴っている『FYI - Merry Christmas Mr. Lawrence』にクレジットを欲しがった坂本龍一は正当な要求だと思うが、ストーンズのこれは、かなり譲歩したというか。それだったら『Nevet Let Go』の方がよっぽど『Never Let Go - Shape of My Heart』ってタイトルにすべきだったような。まぁそんな議論は22年前に散々されていたっけね。

『甘いワナ』は記念すべき初ライブである『LUV LIVE』のオープニングを飾った華やかな楽曲で、あれくらい溌剌と弾ける新曲があったらますます次のライブコンサートに期待が募っていくのだけれど、あれはヒカルの編曲じゃないからあれだけ派手なアレンジになってた訳で、今の体制だとなかなかああいうのは出てこない、かな? まぁ、だったら『甘いワナ〜Paint It, Black』自体を演奏すりゃいいのか。後半、もうどうせなら『Paint It, Black』まるごとにメドレーで繋げてしまえばいいのに……と思ったけど、ファン層を考えると、そこまで盛り上がらないかも。寧ろ『Paint It, Black』から始めて『甘いワナ』に繋げた方が面白いかもしれない。

朝からラジオからは早速チャーリー・ワッツ・プロジェクトの曲が掛かったりしてる。今日一日くらいは、ストーンズの曲を聴いて過ごすのも悪くないかもしれない。R.I.P. Charlie Watts