無意識日記々

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忘れたくないこと─でもたまには忘れるよね

先週金曜日に漫画「ONE PIECE」第100巻が刊行されまして。区切りの数字ではあるけれど読んでる身としてはただの通過点に過ぎなくて。それに、最近では週刊少年ジャンプ以外でならそこまで100巻超えの漫画単行本も珍しくなくてですね。「ゴルゴ13」なんか「こちら葛飾区亀有公園前派出所」超えて201巻まで出てるしね。

ただ、本当にひと続きの物語として100巻まで来たというのが真の恐ろしさでな。これがちょっと他に類を見ない。「名探偵コナン」だって縦糸は色付け程度で基本は一話完結型だし。

類を見ないお陰で初めて直面する問題も多い。読者がついてこれてない。始まった当初10代だった人は30代40代で、マンガを読む習慣が残っていなかったりするし、ずっと読んできていても「果たして過去の展開や伏線を覚えているのか」という問題が出てくる。電子書籍でも全巻(第100巻は紙より1ヶ月遅れて来月発売だけども)所持してるお陰で逐一過去分を見直せる身分ですらそう思う。そうか、そういやゴムゴムの実って最初シャンクスが持ってたわな……とかね。

なので、作品のクォリティは落ちていないのに「つまらない」という人が出始めるのはもう仕方ないというか。人間の記憶容量を鑑みると、全100巻のひとつなぎのストーリーとキャラクターを頭に入れてそれに沿って現在の展開を読めと言われるのはちぃと酷な気がする。尾田の情報処理能力は普通の人間のそれではないですわ。質も量も現生人類の規格を超えている。作者を基準にするわけにはいかないのです。

ポピュラー・ミュージックの場合は、新曲を出すといっても漫画でいえば「一話完結型」なのでそういう悩みとは無縁なのだが、コンサートだとちょっとそういう面が出てくる。最近の曲を気に入ったからといって22年の歴史のあるアーティストの過去曲までチェックしようとはしない新しいファンがいるだろう反面、逆に最近の曲がなかなか頭に入らない昔からのファンが居たりもしよう。20年以上となるとその乖離が目立ってくる。

セットリストを決めるのが難しい。昔からのファンには『First Love』を、最近のファンには『One Last Kiss』を歌ったとして、さてその間をどうするか。

そういう意味で、『Laughter In The Dark Tour 2018』の『Kiss & Cry feat. Can You Keep A Secret?』への大喝采は結構大きかったんじゃないだろうかなと。『Beautiful World』と両A面シングルとはいえ、代表曲とまではいえない知名度で、2007年というデビュー9年目、キャリアの(今んとこ)真ん中辺りの曲があれだけ好リアクションを得たというのは今後のセットリスト構築に刺激を与えたんではなかろうかと。

更に去年と今年行われた『Live Fan Picks』企画でのリアクションもまた参考になる。どれだけの人がどの曲を知っているのか、そして、覚えているのか。どのタイミングでどの曲を繰り出せばサプライズになるのか。ファン層ごとの印象度と記憶力をどれだけデータ化して活かせるかというのが、今後25周年だの40周年だのを迎えて行くにあたって重要となってくる。

先述の「ONE PIECE」などは、盛んに過去の単行本をWebで無料公開し過去のストーリー展開をアピールして現在進行形の物語を読者に伝えようと躍起だ。長くやってるとこういうフェイズに必ず辿り着く。相手が何を知っているかだけではなく、何を忘れ始めているかまで配慮する態度が求められ始めていくんじゃないかな今後。