無意識日記々

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殺伐としたドラマにほっとフッとそっと

さて、ドラマ「最愛」の方はというと、サスペンスに慣れ親しんでいる人には好評になるんではないかなと思われる。作りもしっかりしているし、この先破綻の予感も無い。感染症禍も下火になり撮影も順調な様子。期待に応えてくれるだろう。

一方、ただヒカルが主題歌を歌っているからという理由で観てみただけの人には敷居が高いんじゃあないだろうか。第一話から登場人物が多く人間関係の説明も直接的ではない。訳の分からないうちに75分が過ぎてしまった、という人も多そうだ。

サスペンスの演出には定型文が沢山ある訳だがこのドラマでもローアングルやスローモーションやフラッシュバックなんかのオーソドックスな手法が数多使われている。そういうのに慣れていないと、意味深なワンカットの意図とかなかなか掬い切れないわよね。

聞けばこのドラマ、原作小説などが既存しない完全オリジナルなのだという。だったらネット上でもネタバレを気にせずに楽しめてそれはそれでいいのだけど、何故演出面ではまるで原作小説があるような方法論を取るのだろうかねぇ。癖? 地の文で述べられていることを映像と台詞回しに変換する際に目にするやり方が目立っていた気がする。尺が決まっている中で視聴者に端的に状況や関係を説明するには適しているのだが、別に原作小説が無いんだからもっとわかりやすかったらよかったのになと、少し離れた所から視聴しながら思っていましたよ。

まーこういう細かい指摘は「大きなお世話」なのだ。そもそも金曜22時からラブサスペンスを観ようという層を狙い撃ちにしている番組なので、それ以外の視聴者層は想定していない。実際、視聴率を足し算で増やそうと様々なファン層をもつ登場人物を無理に色とりどり出演させてもストーリーが破綻するだけでした、という例は過去にも沢山あったろうからねぇ。本格的な、硬派な作品を作ろうというのならそういう阿りは少ない方がいいやね。

そんな、ある種硬質に洗練された殺伐の中で『君に夢中』が流れてくるというのは、一服の清涼剤というかなんというか。第2話以降で遊びの少ない引き締まったドラマ展開が齎す緊張感をほっとフッとそっと和らげていってくれそうな期待がある。優しく包み込んでくれるような。『Stay Gold』とはそういった共通点もあるように思われる。

何しろタイトルが『君に夢中』だもんねぇ。早くも第1話の時点で「ラブサスペンスって触れ込みだったけどラブな要素少な過ぎね?」と私は思っていたんだけどそこにこんな甘酸っぱいタイトルの歌が聞こえてくるもいうのは本当によくバランスが取れているなぁと感心しましたよ。ヒカルがまたもやドラマの空気感を読み切ったと再度力説しておきたいわ。『PINK BLOOD』もそうだったが、やや敷居の高い本編に対してそれを見据えてオープニングやエンディングとしてどういった曲調が流れるのが適切なのかをしっかり見極められている。納期ギリギリまで粘った甲斐があったわね。

ならば、あとは、第2話以降でどんな使われ方がされるのか、だ。第1話では75分の拡大版ということもあってか23時跨ぎ辺りに、即ち劇中歌として挿入される使われ方をしていたが、次からは素直にエンディングで流れるのかな。それとも引き続き劇中に挿入されるのだろうか。

過去の例でいえば、例えば、同じくTBS系ドラマである「花より男子2」(余談だけどこれ初見で「はなよりだんご・りたーんず」って正確に読める人居ないよねぇ……)に起用された2007年の『Flavor Of Life』は、基本的には挿入歌/劇中歌であって、主題歌/オープニング曲は別にあった(嵐の「Love So Sweet」)。なのに主題歌を上回る特大ヒット曲になったりしたのは、ドラマの中の本当に美味しい場面で絶妙に『Flavor Of Life』が流れてきたから、というのも結構大きかったのだ。番組が終わるや否や皆がこぞって同曲の着うたをダウンロードしたというのだから凄い話ですわ。

まぁ今回はそういう喧騒にはならないかもしれないけれど、また美味しい場面で使って貰えれば楽曲の評判も上がるというものなので、引き続き劇中歌/挿入歌として使ってくれてもいいかもしれない。ただ、第1話でリタイヤしちゃった人にとっては、決まった時間にチャンネルを合わせれば必ず聴けるエンディング・テーマ固定の方が嬉しいわな。

そんなあれやこれやがあったりなかったりするので、ドラマ自体の評価もこれから高くなっていってくれたら有り難い。プロデューサーさんがヒカルの大ファンということなので、大いに期待していきますですよ。