無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

時代の音質が音楽を動かす

さてこの投稿の後『君に夢中』が発売となる。radikoでフルコーラス聴いているので改めて聴いて衝撃が走るとかはないだろうが、高音質で聴くことで見えてくる事もあるかもしれない。

ハイレゾストリーミングが普及してくると曲作りそのもとが変わってくる。再生音質の変化はそのまま音楽性の変化を齎すのだ。

あたしはロックが専門(?)の人間だが、このジャンルは音質の変化に翻弄され続けてきた。2010代に入ってからあからさまにメジャーレーベルからギターロックがリリースされる機会が減った。ロックチャートはイマジンドラゴンズやマルーン5のようなギターを然程重視しないサウンドが上位を占めるようになった。どの時代もロックサウンドが途絶える事が無い日本市場本当に特殊だと思う。

2010年代になってスマートフォンとイヤフォンorヘッドフォンを使用するリスナーの割合が増えた。結果「耳元でギターをギャンギャン鳴らされるとうるさい」ってなったのだと思っている(私が勝手に)。似たような事態は1990年代初頭にも起こった。アナログレコードからCDに移行し高音部が悪目立ちするサウンドに変化した事によって、それまでチャートを席巻していた70~80年代のキンキンギラギラしたギターサウンドが敬遠されるようになり90年代に入る頃にはグランジ世代の低音を重視したギターサウンドに流行が移ったのだ。本当にあっという間だったなこの時は。

逆から言えば、昔ながらのキンキンギラギラのギターサウンドはアナログレコードのオーディオセットやAMラジオなんかで聴いてみると非常に心地よいんだなこれが。鳴っているだけで嬉しくなってくる。それをCDで再生するとなんとも耳障りになるのだから罪な話。

─昔話が長くなった。即ち、それと似たような事がこれからも起こっていくと思われる訳だ。2020年代に入りストリーミングがハイレゾ化するにつれ、より繊細で空間を使ったサウンドが主流になっていく。それに伴い、ヒカルの編曲にも変化が訪れるだろう。

注目はのひとつは低音だ。ハイレゾの低音は今までと違い音場を占拠しない。故に様々な高音部中音部を保ちつつ低音部を今まで以上に多才に強調できる可能性が広がる。

『Find Love』と『君に夢中』に関しては、共にヒカルの今までに無い“少し低音部を強調してみたパートが一部ある”のが特徴だ。全編に渡ってフィーチャーされている訳ではない、というのがポイントで、なんだか試しにやってみてますという感覚がある。恐らく小袋成彬コプロデューサーの影響が大きいのだと思うが、低音を強めつつアトモスフェリックなアレンジと両立していくのがこれからのサウンドメイキングの方向性になっていくのかなと。要するに鳴る楽器の定位がより立体的になっていくのではないか。

今までのサウンドだと、楽器は左右への拡がりがメインだった。今後はそれに加えてより奥行きのある定位が求められる。例えばギターが右斜め前の頭上で鳴る一方ピアノは左後ろの足許から響いてくる、みたいな事が当たり前になっていくのかもしれない。そういったサウンドへ向かう準備段階のアプローチが、特に『誰にも言わない』以降『One Last Kiss』『Beautiful World (Da Capo Version)』『PINK BLOOD』と続いてきているんじゃないかな。そこから更に『Find Love』と『君に夢中』がどんなサウンドになっているかに興味がある。ひとまず、『君に夢中』が解禁になる。ゆっくりヒカルの作り出した音世界に浸ろうと思います。