無意識日記々

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そこは誰の部屋だったのか

『Find Love』には

『For now committed to my therapy』

という歌詞が出てくる。

「現在セラピーに取り組んでる」

という意味だ。これはまさにそのまんまで、第8回インスタライブでもヒカルはこのあと精神分析に出掛けると言っていたし、「Switch」2018年5月号のインタビューでも語っていた(すっかり忘れてたわ私)。

なのでここの歌詞自体には驚きはない。で。ふと『PINK BLOOD』のこの歌詞を思い出す。

『あなたの部屋に歩きながら

 床に何個も落ちる涙』

不倫の一節にしては変わってるなぁなどと考えて違和感が消えなかったのだけど、これ、セラピストの部屋に通っているのだとすれば結構筋が通らない? 精神を解放する過程で大泣きするというのはよくあることっぽいし。有り得る。

とはいえ、インスタライブでのヒカルの精神分析に出掛ける態度はちょっと友達とお茶してくる程度の軽い雰囲気だった、ような。最近のヒカルはむっつりなので感情がすぐに汲み取れない為そこは要注意ではあるのだが、上の『PINK BLOOD』の一節が持つ“重さ”には少し足りない気もする。

他の説を検討してみる。「あなたの部屋」が、元々はボイストレーナーの部屋だったり、耳鼻咽喉科の診察室だったりしたらどうか? つまり、声について悩んでいる時の歌詞だと読んでみる訳だ。だとすれば、大粒の涙を流して悔しがるのもさもありなん。ヒカルにとって声が出ないことの大きさを物語る『床に何個も落ちる涙』という表現ならなかなかに説得的だ。それに、涙が落ちる様子が、出るはずの声が零れていく様を思わせたりもして、イメージの重なり具合も強めかもしれない。

そして、『PINK BLOOD』ではこの後に

『心の穴を埋める何か

 失うことを恐れないわ

 自分のことを癒やせるのは

 自分だけど気づいたから』

と続くのだ。ここのパートが、何より、テーマが「声」だった場合に物凄くズシリと重く響く。この重さが、この解釈の、実際の是非虚実は別にして、大きな説得力になっているかなとは思う。そして、もし『PINK BLOOD』というタイトルが、“喀血の鮮やかな色の血”のことだったりしたら更に話は凄絶になる──のだが、あんまり重い方にばかり妄想を進ませすぎて歌を素直に楽しめなくなってしまうとヒカルの意に反すると思うのでここらへんで止めておくことにするわね。