『Find Love』では計5回出てくる『I don't wanna be alone』だが、『キレイな人(Find Love)』ではたった1回しか出て来ない。
『失くしたものはもう心の一部でしょ
But I don't wanna be alone』
ここだけだ。ここを日本語に置き換えると
「失くしたものはもう心の一部でしょ
(でも、一人にはなりたくない)」
となる。これは、この歌の歌詞としては“急展開”と言うべきなのかもしれない。というのも、ここまでのお姫様はずっと強気だったから。
『王子様に見つけられたって
私は変わらない』
『汚れたドレスに裸足の私も
いい感じ』
『もういい女のフリする必要ない
自分の幸せ 自分以外の誰にも委ねない』
『汚れたドレスにいつもの私で
何が悪ぃ』
もう明らかに「王子様をアテにする必要はない。私は私自身で幸せを手に入れる!」と力強く宣言しているとしか思えない訳で。そんな人が「でも、一人になりたくないからさ…」だって? これは一体、どういうこと?
それを見るためには、まずその直前の
『失くしたものはもう心の一部でしょ』
の一節の持つ意味を吟味しないといけない。(なお、「なくす」を「失くす」と漢字を宛てるのは辞書に無い用法なので注意。試験とかでは「無くす」や「亡くす」を宛てましょう。)
このフレーズは最近のヒカルの示す人生哲学に於いて重要な位置を占める考え方で、遂に歌詞にしてきたかという感じ。
例えば昨年2021年6月26日のインスタライブでは質問に答える形でこんな風に語っていた。(やや要約)
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(「喪失」はもう)自分の一部だから。
自分の一部を切り捨てて前に進んだところで
別の喪失が生まれるだけで、
それが延々と続くだけだから。
ぐるぐる回ってるだけ。
悲しい気持ちとかいろんないい思い出とか
耐えられない気持ち、喪失感てものは
これはもうずっとあるもの。
じゃあもう大事に抱えて生きていこう
そう思った瞬間に
母親にもらったプレゼントを大事にしてるみたいな気持ちに切り替わったの。
それで初めて自由になった、前に進めた気がしたの。
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しみじみ、味わい深いことを言うよねぇ。何度も何度も読み返したい。ここには、『キレイな人(Find Love)』の歌詞の種がキレイに蒔かれてるよね。
『なくした』という言い方を使ってきたのは、歌詞としての制約からだろう。4つの音、母音の順番。その話は余計になるから置いておいて、ひとまず、『One Last Kiss』の
『止められない喪失の予感』
の『喪失』と同じ概念だと捉えておいて構わない。そして、上記引用で「気持ちが切り替わった」「初めて自由になれた」と話を締め括っているからにはこれはもう「辿り着いた結論」な訳ですよ。この歌はこの『失くしたものはもう心の一部でしょ』で終わっていい。締め括っていいのだ。事実、『キレイな人(Find Love)』の“日本語の”歌詞はここで終わっている。ここから後の歌詞には英語しか出て来ない。言ってしまえば、日本語圏民リスナーはここまでの歌詞だけで納得して貰って構わないんだ、ヒカルの(大雑把な)意図としては。
では、日本語と英語どちらの意味も受け止められるリスナー、及び、それぞれの言語の歌詞をグーグル先生にでもお願いして翻訳して意味を知ろうという積極的なリスナーに対して、ヒカルはここで何を伝えたかったのか? そこの話を…したいのだけど長くなりそうなので、また来週のお楽しみということで! そうこうしてるうちに「VOGUE JAPAN」が出ちゃうけどね!