無意識日記々

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『プレイ・ボール』の和洋折衷&均衡

Adoちゃん凄いねぇ。遂に椎名林檎嬢とタッグを組んだと。Adoちゃんの主演映画(というしかないだろうもうあれは)「ONE PIECE FILM RED」も過去のワンピ映画どころか歴代東映映画の最高興収を上げそうだというし、飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことかと。

実際、彼女のパフォーマンスは短い期間で急成長していて若いって凄いなぁとおじさん感心するしかないのだが、アプローチがやたら生真面目かつ勉強熱心で、仮に彼女の性格の反映だとすると「うっせいわ」みたいな跳ねっ返りな歌詞でブレイクしたのはちょいと本人のキャラクターからは離れていたのかもしれへんね。でも今年の活躍はそこらへんのファースト・インプレッションも随分払拭してくれるのではないかな。頑張って欲しいね。

実を言うと宇多田ヒカルさんもファースト・インプレッションに随分翻弄されたクチで。単純に、テレビ初出演が注目され過ぎたので(ほぼ総ての出演で各番組の歴代最高視聴率を記録)、その時の印象がず~~~っと尾を引いた、というだけなんだが。その後視聴率が落ち着いたということは、その1999年夏にしか宇多田ヒカルを見たことがない人が1000万人単位で居た、居るということで。最近は流石に見なくなったがデビューして10年以上ヒカルさんをR&B歌手だと呼ぶ人が絶えなかった。いつも言ってるように日本語としては「R&B」より「宇多田ヒカル」の方が有名だったしね。

『生意気そうと思われる第一印象』─2002年にリリースされた『プレイ・ボール』の歌い出しは、そういった風潮をちくりと風刺するものだった。歌手自身のゴシップ的ファクターを匂わせる歌詞ってどちらかというとアメリカ的な気もするのだが、この歌で歌われているのは情緒溢れる「日本の夏」である。『祭りの音』をほんのり匂わせる音の運び方なんかのバランス感覚も本当に絶妙でね。この歌を聴くと噎せ返るような夏休みの暑気と湿気を思い出す。

とはいえ当のヒカルはどこまでそういった「日本の夏」を体験してきたのかはよくわからない。ちょうど10年前の今日、ヒカルはこんなツイートをしていた。

@utadahikaru : 毎日セントラルパークでローラースケートしたり、友達とパジャマパーティーしたり、本読んだり、美術館でスケッチしたり、のんびり過ごしてました。サマーキャンプに行く子多かったけど… RT @Naka6606: アメリカの長い夏休みをどのように過ごしていました?

posted at 2012/8/18 19:51:12

@utadahikaru : ただのお泊まり会ですよ!みんなで髪の毛セットし合ったり(三つ編みとかね)、ベタだけどPillow fight(枕投げ合戦)とかするのだ な〜つかし〜(∩´(エ)`∩) RT @g_anko: パジャマパーティどういう事するの??

posted at 2012/8/18 19:58:51

いやぁ、夏だねぇ青春だねぇ。この頃かな?バスケやバレーやクロカンやら活動的にしてたのも。そんなアメリカンな夏休みを満喫していたヒカルさんが和風の夏休み、つまり花火と高校野球プロ野球でも別にいいのか)をテーマにした歌を書いた20年前のこの曲なんだけど、リズムの取り方や符割りの難しさは「これぞR&B」と言いたくなるような「邦楽っぽく無さ」もあり、ほんにバランス感覚に秀でてるなと痛感する。

そんな風に日本の文化とアメリカの文化を行ったり来たりしていたヒカルさんが今はロンドンという「第三の地」で我が子を育てているというのがね。『BADモード』アルバムの制作や撮影にあたってはロンドンのみならずNYや東京も訪れていたというし、こうやって「3箇所」を拠点にすることがヒカルの心身の安定に寄与してくれてるとすれば、嗚呼これもトリニティ─三位一体の一環なのかもねと生き方と歌詞と仕事の繋がりが総てちゃんと一貫したコンセプトに基づいていて安心できるのでした。8月に聴く『プレイ・ボール』は本当に乙ですねぇ。