無意識日記々

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『もう一服呑む前に』

『About Me』の歌詞の題材が、当時婚姻関係にあったヒカルと紀里谷さんの二人ではなく、或いは、だけではなく、藤圭子宇多田照實コンビのことを(も)歌っている説について前に駆け足で通り過ぎてしまった為、ここらでちらっと触れておきたい。

その説の根拠のひとつはこの箇所だ。

『もう一服呑む前に

 その痛みについて考えてみて

 あなたにとって良い作用も

 あるかもしれないから』

元の英語では『一服呑む』の部分は『you take another dose』なのでこれは薬剤か薬物のことだ。なるほど、何らかの症状を抑えるために圭子さんが服用する様子というのは想像がつく。紀里谷さんのイメージでもない。なので、そういう連想がはたらくのもわかるなぁ。

でも今回、LSAS2022で『About Me』を歌ったことで、私は別のことを考えていた。『BADモード』のこの一節だ。

『Here's a Diazepam

 We can take each half of』

Diazepam/ジアゼパムは薬品の名称で、抗不安薬として用いられるそうな。それが手許にあるよ、半分こしようね、という歌詞である。

これは『About Me』の歌詞とは対照的だ。『About Me』ではお薬で抑えようとしている『痛み』のもつ大切さを説いている。これは後にヒカルがインスタライブで唱える「元々持ってる痛みが、誰かといることで感じずにいられる」という言に於ける『痛み』と同じように思える。

一方『BADモード』では、2人で半分ずつ痛みを和らげようとジアゼパムを、お薬を服用する。それは、裏を返せば、痛みを半分こしているのだとも捉えられる。その痛みは孤独から来るものだから、孤独の感覚を分かち合おう、わかり合おうという常なる宇多田ヒカルの世界観を象徴する歌詞になっているのだなと。虹色バスで言う『Everybody feels the same』な部分だね。

もし『BADモード』で描かれたこの風景が、最近のことだけではなく、薬品名や相手が違っていたとしても、ずっと変わらないヒカルの人との接し方なのだとすれば、今引用している『About Me』の歌詞のこの一節も、圭子さん照實さんに限らない、昔からあるヒカルのやり方の事なのかもしれないなと。孤独から来る痛みや不安と、それを和らげるお薬と。自分の歌はそのどちらにでもなるのだと、よくよく知っているのかもしれないね。