無意識日記々

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#FirstLove初恋 全9話感想をなるべくネタバレ無しで

ひとまず、ドラマ「First Love 初恋」全9話観終わったよ。実写ドラマを等速で観ていると高確率で寝てしまう私が3日間で観終えたというんだからこれは相当面白かったと言っていいんじゃないでしょうか。

兎に角どこを切ってもクォリティが高い。余りに総ての面で手堅いためクリエイティブ面でのサプライズみたいなものはないんだけど、古来からの作劇のノウハウの蓄積が凄まじい。これは「最愛」を観てても思ったことだな。テレビドラマや邦画の世界が円熟してるっことっすな。エンドロールに出てくる名も知らぬ(多分結構歳のいった)スタッフの皆さんが仕事してんだろうな~と思わせてくれる逸品だった。

その分、大人向けというか、静かな語り口(映像面でも音声面でも、ね)が貫かれていて、「まぁ、わかるよね」というトーンで全体が進む。それに鼻白む人は副音声や英語字幕を頼ればいいのが配信ドラマのいいとこだね。あたしも手話は読み取れなかったから日本語字幕のお世話になりましたよ。

そして、自分は3日かけてバラバラに観終えたのだけど、出来ることなら7時間半?一気観するのがいいのではないかと。よくいう伏線回収というやつが余りにも小ネタで然り気無い。つまり、気づかなくてもストーリーには差し障りがないよということなんだが、その割に心情的には核心に触れるようなネタが鏤められていて、これに気づけないのは勿体ないなぁとも感じさせられ。これ、もし週一で配信されてたら私忘れてたネタ幾つもあったと思うよ。ついさっき或いは昨日観たとこ、だったから気づいたとこが幾つかあった。

そういウ風に全9話全体の構成を考えた上で全体が設えられているのだけど、そうやって話をまとめ上げてストーリーとしての面白さをアピールすればするほどファンタジーさが増すというか、現実味が薄れるというのは、美点なのか弱点なのか。前半中盤までの現実に即した「恋愛中あるある」「失恋中あるある」で硬軟良悪両面に於いて心を抉ってくる細かい描写は、なんというか同じ宇多田ファンだからこその恋愛観の共有を感じて寒竹さんあんたも好きねぇと思えていたのだけど、第8話第9話まで来るとそれが浮遊して別世界に飛んだ感覚になる…のは贅沢なロケーションのせいだけでもあるまいて。逆に言えば、そんなとこまでロケに行ったんだからそれ自体が狙いだったんだろうけど、それを視聴者が受け容れるかどうかはまた別問題かな。

…と、いうのが、単なるドラマの感想になるのだけど、肝心要の場面で流れる『First Love (たぶん2022 Mix)』と『初恋(たぶん2022 remaster)』の威力が凄まじく、それが強引すら越えて自然必然な感覚をこちらに植え付けてくるのだから、やっぱ宇多田ヒカルは凄いなぁと改めて(何万回目?)感じさせてくれた。だってこれらの歌はうちらの生活の中に溶け込んでるものだからね。ドラマの中でストーリーが最もファンタジックになる場面で(うちらにとっては)もっとも身近な歌が流れてきてファンタジーを越えていく。なんとも不思議な体験だった。

もっと俗っぽく言えば「ここで主題歌が流れてきたらお涙頂戴だよねぇ」と揶揄されない場面で真正面からその揶揄を質して正すだけの力が楽曲に宿っていたなと。「かっこいい」とでもいうべきかねこれはもう至ってシンプルに。ともすればスタンダード・ナンバーとして流れてきたら笑われかねないくらいに有名になり過ぎた(ベートーベンの「運命」とかバッハの「小フーガ・ニ短調」とかみたいなね)曲をもう一度感動的な場面にまで持ち帰ってくれたという意味でも、このドラマには精一杯のねぎらいの言葉を掛けてあげたくなっています。寒竹ゆり監督、やり遂げましたねぇ。宇多田ヒカル公式の歴史に、「ブラックジャック」みたいな黒歴史としてではなく(笑)、寧ろその名をより強くするだけの作品を作ってくれました。大いに讃えたいと思います。

にしても、一旦780円の「広告あり」プランで観てたのに、途中一度も広告が入らなかったな。もしかしたらこの作品はCMがNGだったのかもね。まだ加入を躊躇ってる人には、780円で一ヶ月だけ加入して全9話一気観すりゃ十分元は取れるんじゃない?と言っておきますか。1話あたり87円とか? それが安いかどうかは観て判断してほしいっすね。