無意識日記々

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これくらいにしておこっか。…おこなのか私?

アルバム『BADモード』と『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』がピッチフォークのみならず他のメディアでも2022年を代表する1枚、1曲のうちの一つとして取り上げられているようで。いやはやなんか凄いね。今までこんなことあっただろうか。遂に中村明美さんのニューヨーク・リポートにまで名前が出てきたとかいやこれホントにフツーに洋楽扱いというか。最近知り合った友達の家に遊びに行ったら親戚と出会したみたいななんか不思議な感覚だわ。え、そことそこ繋がってんの???っていう。

https://rockinon.com/blog/nakamura/204838

でもねぇ。20年遅いよね。昔からヒカルさんは凄いので、Floating Pointsが参加してるっていうからどんなもんかと聴いてみたらなんだこれとんでもないぞみたいな発見のされ方を2022年の今されるって、これまでの十数年、きっとメディアとミュージシャンの間にずっとミスマッチがあったんだなぁと思わずには居られない。

ジョン・セオドアが『Kremlin Dusk』に参加してるから言うんじゃないけれど、デビューした頃のTHE MARS VOLTAを思い出す。彼らの初期のサウンドはシンプルにプログレッシブ・ハード・ロックで、一言で言うなら“LED ZEPPELIN meets KING CRIMSON”とでも形容できるものだった。この表現で音像の8割方は伝わる。あとはたまにジェイムズ・ブラウンとかPINK FLOYDの影響も出てくるよって言っときゃ95%くらい想像がついたもんだ。要は結構歴史に根差したサウンドだったのだが、最初の触れ込みが「元AT THE DRIVE INのメンバーが」だったのがマズかった。ああいうシンプルでパンキッシュなサウンドを追い掛けてるファンやメディアって、プログレなんてまともに聴いたことがなかったんだろうな─クリムゾンが弦楽四重奏曲を得意としてるとか全然知らなかったんだろう─、そこでいわゆるミスマッチが起こって、届くべきファン層にTHE MARS VOLTAサウンドを届けることが出来なかった。まぁ徐々に浸透はしていったけど、あの1stは全英全米同時初登場No.1をとらないといけなかったねぇ。

UTADAのデビューもそんな感じだったのよ。見出しはいつも「日本のブリトニー・スピアーズ」みたいな感じで、21歳のアジアのアイドルが全米に挑戦みたいな切り口でばかり語られて。UTADAがいや私はそういうのじゃないですよ、共感するアーティストはもっと別のジャンルの…とインタビューで訴えても届かなかった。『EXODUS』のエレクトロニカサウンドが届くべき所に届いていたら、大ヒットはしなくても次への足掛かりは作れたろうに。次の5年後の『This Is The One』はまるでデビュー・アルバムのようなノリでプロモーション活動をしなくてはならなくなり、(恐らくそのハードワークが祟って)ヒカルはアルバム発売週に扁桃周囲炎で休養期間に入ったのだった。

…なんて恨み節混じりの思い出話語りはこれくらいにしておこっか。来年からはヒカルさん、グラミー賞にノミネートされたりするのかしら? まだ早いか。でも、そのうちそうなるのかねぇ。なんていうかそうなってももう今更というか、海外のメディアの皆さんに対して、貴方方が気がつかないうちに宇多田ヒカルさんはとんでもないところまでもう来てしまってますよという気分がどうしても抜けない。これからどう絶賛されようが売れようが、既に手遅れというかね。いや、ヒカルさん本人が喜んでくれればそれでいいんだけどね。人生は1回こっきりなんだから、お互い悔いの無いように生きましょうぞ。