無意識日記々

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#裸婦抱く で初披露プチ擬似体験

『ともだち』に続いたのは『Too Proud』だ。ツアー初日にリミックスがリリースされ一躍『Laughter in the Dark Tour 2018』の看板曲として注目される事になったのだから歌わない訳がない。(同じ理屈でそう思ってた他のあの曲は歌いませんでしたけどね…。)

ライブで『Too Proud』をやるとなったらやっぱり「ラップ部分をどうするか」が気に掛かる。オリジナルではイギリス人ラッパーのJevonが参加、リミックスでは中韓越の3ヶ国からゲストを招いていた。『Too Proud』はここに至って「その時々に応じたゲストを迎えてお送りする融通無碍・臨機応変な楽曲」として認知される事になったのだ。

横浜2日目では、歌の事前には引き続きフキコさんが踊る事が告げられただけで、パフォーマンスに入る前にゲストの告知はなかった。これはラップパートに入った途端にゲストが登場して会場を沸かせるのか、はたまたバンドメンバーの中にラップが堪能な人でも居るのかとノリノリになりつつも固唾を飲んで見守っていたのだが、どうにも誰もマイクをとる気配が無い。そうこうしてるうちにそのパートの時間がやってきて…なんとヒカルがそのまま歌い出した! しかも日本語で!

普通なら、スタジオバージョンでゲストを迎えていた楽曲をライブで披露するときにゲストが来ず本人がその部分をカバーしてしまったら興醒めだろう。しかし、Jevonはファンに予め認知されていたアーティストではなく、大部分の人が「誰それ?」状態で聴いていただけなので、寧ろヒカルが自らラップしてくれて嬉しかった人の方が遙かに多かったんじゃないだろうかな今回の場合は。

何といってもこれは、部分的にではあるものの「宇多田ヒカル作曲の音楽の初体験がライブコンサート」という今までにないケースだったのだ。これに興奮するなという方がおかしい。ただスタジオバージョンのJevonのパートをそのままヒカルがなぞるだけだったらここまでは興奮しなかっただろう。それはそれで別口で聴いてはみたいけどね。ツアー開始までに方々で囁かれていた「ライブで新曲初披露」への期待に、ほんのちょっとではあるものの応えてくれた訳だ。いやぁ、レアな体験をしたぜ。

楽曲のほんの一部だけでもこのレア感。完全な新曲の初披露をライブコンサートで体験したらどんな興奮が待ち受けているのやら。そんな妄想まで膨らんだ『Laughter in the Dark Tour 2018』公演の『Too Proud』でしたとさ。

#裸婦抱く の幕間が途轍も無く規格外

『Too Proud featuring Utada Hikaru(それ本人やがな)』を境に公演は休憩に入る…かと思いきや、ここで又吉直樹作・演出・出演によるショートフィルムが舞台上で放映され始める。『ヒカルの5』では『サングラス』の収録映像が流された事もあったし『Utada United 2006』では詩と映像の融合に挑戦したりと幕間にスクリーンを使う事は珍しくなかったが、如何にテレビ番組で共演していたとはいえいきなり今まで1度も共演していないアーティストに幕間の15分を任せるなんて思い切った事をしてくるものだ、とまず思った。

果たしてその内容はというと、箸休めとかトイレタイムには成り得ない非常に充実した内容で、「これだったら1度又吉直樹の作品を読んでみてもいいかな」とまで思わせるものだった。まだ読んでないけどなっ。

このショートフィルム、非常に示唆と含蓄に富んでいてこれについて語り始めると多分一向にライブ後半の話に進めないので、コンサートの構成に多大な影響を及ぼした一点についてのみここでは触れておきたい。

ここでの一点というのは、そう、コンサートの後半でどの曲が演奏されてどの曲が演奏されないかをこのショートフィルムが幕間のこのタイミングで盛大に曝露してしまった点である。そんなのアリなのかよ。初めて見たわこんなん。

どういうことかというと、その幕間にスクリーンで上映される映像の中でアルバム『初恋』収録曲をBGMとして使いまくったのである。

これ、リアルタイムではまだ『初恋』から披露されたのは『あなた』だけだったので、それの意味するところは!─そう、“BGMで使用された楽曲はこのあと歌われない”事がこの時点でわかってしまったのだった。

この時の複雑な心境は忘れられない。コンサートの途中でセットリストのネタバレを公式サイドから喰らったのである。何とも言えない気分だが、逆から考えると、アンコールまで「まだあの歌を歌っていないではないか!」と期待を引き摺った揚げ句結局歌ってくれなかったと落胆するよりこうやって早々に見切りを付けさせてくれた方が親切だった、という風にも言えるかもしれない。ここは意見が分かれるところだろうが、私の場合ショートフィルムを見終える頃には「あの曲もあの曲も歌わないと知れてスッキリしたかも。逆に言えば『初恋』収録曲で今BGMに使われなかったヤツは望みがあるということだな!」とポジティブに捉えられていた。ホントに不思議な事をするものですね。

何しろ『残り香』、『Good Night』、『夕凪』、そして『大空で抱きしめて』などなどが次々と流れてきたのである。特に『夕凪』が聞こえてきた時には「ツアータイトルをナボコフからもろたのに歌わんのかい!」と思わずツッコんでしまった(心の中で)。残念は残念だったよそりゃ。

しかし、規格外にも程があるよね。これだけあっさり新曲を消費しても後半の内容の密度は全く落ちなかったのだから。まさにこのショートフィルムのBGMの贅沢さはヒカルのセットリストに対する絶対的な自信の顕れだったといえる。事実、後半は本当に本当に凄まじかった。『Laughter in the Dark Tour 2018』公演第2部はショートフィルムが終わると間髪入れず始まることになる。とある演出によってこの日1番の大々々歓声を巻き起こしながら!