無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

ripe for rebellion

楽曲を制作しておきながらリリースしたりしなかったりしていくとすれば、仮に今までと同じ制作ペースを維持したとしても確実に発表の間隔は長くなってゆく。

実際、長く続けてきたミュージシャンは大抵キャリアの後半になってゆくにしたがい、リリースペースが落ちてゆく。それは、既に地位を確立していて若い頃のように自分の事を証明する必要がなくなってくるからでもあり、知名度とともにゆったりしたレコード契約を結べるようになるという事もあり、又、ツアーがどんどん大規模になってゆき単純に創作に費やせる時間の割合が減るということもあり、結婚して家族ができて家で過ごす時間が確保したくなるからでもあり。理由は様々だが、なかなか後期になるにつれリリースペースが増してゆく例はない。

光の場合、まだ28歳である。復帰するとしてもまだ30代、普通であるならまだ成長過程であってもいい筈の年齢だが、やはりここはスポーツ選手同様勤続年数を考慮すべきなのだろうか。

SC2DISC2の新曲が"幻の6thアルバムの楽曲"だという私の解釈に立つならば、光は作曲家として成熟期に差し掛かっており、これから質の高い曲はより高く、研ぎ澄まされ、しかし間隔は大きくなってゆく、というのが見立てられる帰結である。

光自身が、どう考えているかはわからない。

ただ、その前に、何度も指摘してきたように、"アルバム"という形態が存続するか、という問題もある。例えば一年半位かけてシングルを5枚リリースし、そこから半年間ツアー、なんてサイクルも考えられる。遅くなる創作ペースに従ってそれを4曲とか、3曲にすればよい。体力的な問題さえ起きなければ、ツアー自体はあと2〜30年は定常的に敢行できるだろう。

しかしそれもまた妄想だ。

ヒカルは、恐らく、邦楽市場に於いて稀に見る"無期限複数枚契約"を結んだアーティストなのだ。10枚か何かは知らないが、1年1枚の縛りを気にする事なくアルバムを制作できる環境にある。まぁ、無期限といってもヒカルはレコード会社の事情を聞き入れる方だから、ついつい決算間際の3月リリースが多くなってしまっているが。

その契約がある以上、そして、恐らくそういった側面においては伝統的なフォーマットを好むであろう性格(つまりファンが戸惑うような事は敢えてしない人で―いやしまくってきた気もするな…どっちだろう特技惑わす事の人)を考えると、4年に一枚とか、8年に一枚とかのペースになっていくかもしれない。遅かれ早かれ、そうなる事は避けられないのだ。成熟していくアーティストというものは。

いや実は、この人間活動がよいリフレッシュとなって、熟れて熟した実だった創作能力がまた青く堅く若々しく瑞々しいものに変化するかもしれない。光はそれを狙っているかもしれない。

しかし、今週何度も繰り返してきた"成熟"という過程は、非常に一般性の高い"自然現象"なのである。生物の一生でも星の一生でも芸の遷移でもいい、時と共に変化する事物にとって不可避的に訪れるものなのだ。光がもしそれに抗おうというのなら、何か"自然の摂理に反する"行為をしなければならない。

でもそれは、"Wild Life"というキーワードと相容れなかったりします。難しいなぁもぉ。

ファンとしては、ペースは好きにしていいからカラダ壊さないでね、というのが最優先だったりするので、そこもまた奇妙な螺旋の絡み合いになりそうだ。

この問題は、まだまだしっかり考えにゃあ、ならんな。