無意識日記々

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Montreal/MARILLIONを聴きながら

Beautiful Worldのポイントは3つだ。アニメソングである事、映画のエンディングで流れる事、宇多田ヒカルによるPopソングである事。

"Pop"という言葉にヒカルは随分こだわりがある。いや、UtaDAもまたその点についてはこだわっていた。そこを外した曲はリリースする気がないのだろう。そしてそのこだわりは、その時々のJ-Popサウンドとはあんまり関係がない。ただひたすらに、ヒカルの思う"Pop"を追求しているに過ぎない。時代性は自然体と共にあれば十分なのだろう。先取りする気も後追いする気もない。普通にしていれば出てくるものだ。それが難しいんだけど。

ところが、BWではそれ以上のPopさがあるように思う。つまり、アニメソングとしての側面を成立させる為、と言い切れるかは難しい所だが、いつものようにただヒカルにとってPopであるだけでなく、シーンにとってもPopであるように作られている、とはいえると思う。

何故アニメソングとして成立させる為に"J-pop"である必要があったか。それについて大事なのは二番目のポイント、「これが映画のエンディングに流れる事」だったとみる。

ヒカルにとってアニメーションによる物語が終わる時、又は物語が次に続く時に流れる音楽については確固たる"原風景"がある。それは、5歳の時に観たというテレビアニメ「CITY HUNTER」(HUNTERxHUNTERじゃないよ)のエンディング・テーマ、TM NETWORKの"Get Wild"である。

実は、エンディングテーマとしての"Get Wild"は当時画期的な点があった。その頃のテレビアニメのエンディングテーマといえば本編Bパートが終わった後のCM明けに流れるのが定番だったのだが、"Get Wild"は本編のラストシーンに食い込んでイントロが流れ始める構成だった。テレビドラマではお馴染みであったが、テレビアニメでは大変珍しく(少なくとも私はその構成を観るのは初めてだった)、その効果も手伝って"Get Wild"は特別な楽曲として認知されるようなったと感じられる。

ヒカルがアニメーション映画のエンディングを担当するとなった時、この"原風景"たる"Get Wild"からの影響があったのではないか、とみるのは行き過ぎだろうか。特にEVA序はそこで一旦終了するとともに、続編への期待感を煽り立てるべき立場にもある作品だった。テレビアニメのエンディングテーマも同様で、それは「今週はもう終わりだよ、来週もまた観てね」というメッセージを託されている訳だ。Beautiful Worldにその役割を託す時に、Get Wildが一切参考にされなかったとしたらそれは不自然ではなかろうか。


ここで押さえておきたいポイントがもう一つ。TM NETWORKというグループは、ファンだったからこそ敢えて言うが、80年代当時は大した認知度はなかった。例えば、「ザ・ベストテン」でいえば最高位は"Dive Into Your Body"の3位が最高で、それも一回だけだった程度。チャートアクションがダイレクトになるのはTMNになってから、である。

そして更にそのネームバリューが上がるのは、90年代に小室哲哉がプロデューサーとして大ブレイクを果たしてからだ。ここらへん、時代と世代がちょっとズレただけで随分と印象が変わると思う。

何が言いたいかといえば、つまりTM NETWORKサウンドは、90年代の小室哲哉絶頂期を経た上で、彼のサウンドが日本中を席巻する事によって"J-Popのスタンダードなサウンド・スタイルのひとつ"に成ったという事だ。若干ややこしいな。もうちょっと丁寧に書きたくなったので次回に続く……―――このタイミングでGet Wildが流れるのねw