無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

ああそうですねぇ。

インタビューでヒカルが「First Love」への(相対的な)思い入れのなさを躊躇いなく語っているのを見て「おいおいいいのか」と思ってしまった。仮にも15周年記念盤の特別ブックレット―ってあれは最早冊子の類じゃないな…書籍、写真集、いやさ宇多田ヒカル図鑑とでもいうべき重厚さか―においてその作品を軽んじてると思われかねない発言をしてそれを掲載してしまうとは。宇野さんぐっちょぶであります。

しかし、無理もない。幾ら作品のクオリティーが高かろうが、当時のライフスタイルではレコーディングは「高校生の週末アルバイト」の延長線上にしかなかったのだから。その後の「全身全霊を注ぎ込んだ」作品群とは訳が違う。そこが「DEEP RIVER以降」とは異なる点だ。

あんまりにも正直にヒカルが語ってくれているので、この事についての補足は余り無い。寧ろ、「勘ぐり過ぎると誤解するから書かれてあるそのままに受け取っておけばいいですよ」と助言する位の方が適当か。何しろ、日本商業音楽市場No.1の作品である。「私の作品がバカ売れしたらなぁ」と夢を見て心血を注ぎ人生を捧げてきた音楽家たるや数知れず。皆さんの知っているあの一流ミュージシャンもあの有名アーティストも、みんなみんな「歴代1位とかになったらすげーんだけどな」と躍起になってきた最大の目標となっているような位置なのだ。オリンピックでいえば金メダル。そんな皆の目指す先に居たのが16歳の少女で、31歳になってその頃の事を振り返った感想が"そんなに思い入れがない"だなんて、あーたそんな殺生なという感じなのだが、それが正直な気持ちなんだから仕方がない。実際、目指してやってきてた人達も、このクォリティーの前では押し黙る他なかろ。というか、その人達みんな宇多田ヒカルの事好きだろ。尊敬してるだろ。だ
から、これで何の問題もない。世間的には兎も角、ミュージシャンの世界、特にトップの仲間たちからすればこれでよかったのだから。

この、重厚な装丁に似合わない、いや、ケースの内側のノリそのまんま(でもないか)の緩い空気で行われたインタビュー。つとに魅力的なので、出来れば"読書用"のバージョンも販売して欲しいが、それってもう1セット買えって事になりますね、ああそうですねぇ。