無意識日記々

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『矛盾だらけの自由』

『矛盾だらけの自由』を皮切りに始まるGive Me A Reasonは、色即是空空即是色の精神が基本にある、と解釈して読み解くとわかりやすい。ただ相反する物事が左右に在る、というよりは、ひとつのものを掴んだら途端にその反対のものになる感覚、つまり色(カラー)だと思ったら空(カラ)だった、空(カラ)だと思ったら色(カラー)だった、の繰り返しになっている。矛盾が目の前にあるというより、矛かと思ったら盾だった、盾かと思えば矛だった、という感じ。

次のセンテンスで既にそれは顕著である。『何にも縛られたくないって叫びながら 絆求めてる』。これを字で読んでしまうと、一度に目に入ってしまうからわかりにくいが、歌に乗って時間をかけて言葉を受け入れていくと、叫んだ後にそれと相反する願いが押し寄せてくる感覚がよく伝わる。ただの言葉というより、これが歌詞だと踏まえる事が大切だ。

絆とは結び目の事だ。「何にも縛られたくないという叫び」には誰しも自由への希求だという解釈を与える。そこで油断したところで、同じく常套句の「絆を求める」という、前のセンテンスと真正面から相反する言葉を連ねる。絆という結び目を作る為にはお互いの関係を縛り合わないといけないというのに。自由になりたいのか束縛されたいのか。ここでいきなり前節の「矛盾だらけの自由」を提示してみせる訳だ。Only Sixteenとは思えない知性、とOnly Sixteenらしい向こう見ずな大胆さである。

次の『守られるだけじゃなく誰かを守りたい』もそうだ。前文を受けて、守られる事と守る事という対照的な立場の2つを描写する。流れがいいから、内容的には唐突だがすんなりと聞ける。なかなかの老獪さである。しかし、この文での主役は守る守られるではなく「誰か」が誰なのかという話なのだが、それは話を外れるのでまたの機会に回す事にしよう。

そして歌はサビに移る。ここでの英語がフックライン、コーラスとなって曲全体を覆うのだが、その言葉の意味を考えた事があるだろうか。リフレイン型のコーラスというのは、繰り返されるうちにどんどんただの音の並びになってゆき、なかなか本来の言葉の意味にまで立ち戻れない。ここはそこでぐっと立ち止まって、聴き慣れたこのフレーズの含意について考えてみよう。続きはまた回を跨ぎまして、になりますけどね。