無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

"奮起"

先週土曜日のテレビ番組「Music Fair」に新人声優歌手の雨宮天が出演、スキマスイッチクリス・ハートと共に"奏"を歌っていた。春期アニメ「一週間フレンズ。」のエンディング曲としてそのスキマの"奏"をカバーしていた縁での出演だったが、彼女にとってはテレビに出て歌う事自体が初めてで随分と緊張した面もちだった。スキマスイッチのみならずクリスハートまで担ぎ出して周りを固めていた事からも、コラボレーションはこの番組の華だとはいえ、番組側も雨宮のキャリアや実力や性格を考えての演出だったのだろう。

収録時に如何に悪戦苦闘したかは雨宮のBlogにこれでもかと事細かに書いてある。出だしのタイミングがとれないからとアレンジを変えてもらうとか初々しいことこの上ない。でも、これが普通なんだろうなぁ。初出演なんて皆こんなもんだよ。

雨宮はソニーミュージックレインが今年文字通りのイチオシ/トップ・プライオリティで売り出している新人声優歌手だ。今年に入ってから次々と深夜アニメの主役級と主題歌級を任されている。普通なら剛力推し、もとい、ゴリオシと(って最近きかないな)言われても仕方のないところを抑えてるのは彼女のキャラクターの所以だろうか。

つまり、今年のソニーの看板歌手の一人で、今18歳だっけかな、これから大事に育てていこうという歌手なのだ。同期からすればいわばエリート中のエリート。それでも最初はこれだけガチガチに緊張して、基本的なところからお膳立てしないと一曲の収録さえままならない。でもそれが普通である。


"Sukiyaki"を聴くと、その"普通の感覚"がまるごと吹っ飛ぶ。その歌唱力自体異次元だが、何より恐ろしいのは、プレスが相手とはいえあのサイズの会場の舞台に立って人前で歌うのが初めてと言っていい15歳が何の物怖じもせず怖じ気く事なく自信満々にカバー(と持ち歌)を歌いきった事だ。寧ろ、聴衆を見下してすらいる。このどうしようもないふてぶてしさは一体どこからきていたのだろうか。そして、どこへいってしまったのか。

自らの歌唱力に対する自信、も勿論あるだろう。それが一番だ。それに、練習でも失敗する事はそんなになかっただろうし。しかしそれ以上に、総ての原点として「誰よりも耳がいい」という事の自信があったのだと思われる。もしミスがあったとしても、最初に気付くのは自分だし、自分しか気が付かないかもしれない。私より鈍い耳の集まりを前にしても何も気にする事はない。この舞台でいちばん音に厳しい(というか強い、と言った方が的確かな、あの朗らかさの前では)のは自分なのだから、と。

どうだろう。わかんない。しかし、今はあのふてぶてしいまでの自信たっぷりの態度は失われてしまっている。歌唱力に対する自信は昔よりあるだろうし(実際技術の幅は広がっている)、耳もまだまだ健在だろう。年齢的にはそろそろ超音波が聞こえづらくなっているかもわからないが。何故そうなったかを説明するのは難しいが、次のリリースがもし売れなかったら案外この"Sukiyaki"で聞かれるようなふてぶてしさが復活するかもしれない。「てめーらナメてんじゃねーぞ俺の歌聴きやがれバカヤロウ」という気分になってくれないものか。一言で言えば"奮起"である。確かに、ここまでの歌を聴かせてくれる歌手が売れない世の中は間違っている。"世直し"をするつもりで売り出しに本腰を入れてみてもらうのも悪くないかも、しれない。