無意識日記々

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「コーラス・リミックス」

LOVE PSYCHEDELICOの"光"は「コーラス・リミックス」である。

今作にはカバーというよりリミックスと呼びたくなるトラックが2つある。1つは"time will tell"、もう1つがこのDelicoの"光"である。

なぜこの2つをリミックスと呼びたくなったかといえば、他の曲でも多少はあるのだが、とりわけこの2つが「サウンドがこのままでヒカルの声に置き換えるのが容易だな」と思ったからだ。更に、恐らく作り手の志向性としても、リミックスに近い感覚で作業をしたのではないかという風に感じられたからだ。

まぁそれは私個人の感覚による言葉遣いなので置いておいて。この"光"の最大の魅力はコーラス・ワークである。中の人的には、原曲の16ビートのリズムとグルーヴをどう解体して再構築するかに腐心したらしいが(詳しくは18日木曜日21時からのInterFMでのコメント出演を参照の事)、ぶっちゃけこのリズムのノリは我々ファンからしたらGodson Mixと何となくカブる感じがして新鮮味に乏しい。いや実際は随分とリズムもサウンドも異なるのだが、印象というのは不思議なもので、「あぁ、似たノリだなぁ」と思えてしまうものなのだ。おんなじ風に思った人居ない?

それはそれとして。一方コーラスワークはもう「圧巻」と言いたくなる程の力作である。勿論メイン・ヴォーカルのエモーショナルさはオリジナルには遥かに敵わないが、そちらで勝負せずに、徹底的にコーラスの重ね方とアイデアに拘った。その方法論を選んだ事は大正解だし、実際大成功だ。

オリジナルの"光"でもスタジオ・ヴァージョンは分厚いコーラス・ハーモニーで彩られていたが、このDelicoの"光"はただ三度上下にハーモニーをつけるだけではよしとせず、それはそれは様々なアプローチを見せてくれる。オクターヴ・ユニゾンもただ重ねるのではなく、発声を微妙に違(たが)えながら左右に振り分けたり、効果的にスキャットを空間に散りばめたりと、まるで声色の博覧会である。特に、各声部毎の発声のバリエーションは本家を上回る多彩さだ。よくもまぁこれだけ色んな声を出せるものだと感心するが、何より凄いのはこれだけ多種多様なパートを重ねておきながら、コーラスとしての一体感が損なわれていない事である。掛け布団五枚に毛布三枚にくるまって寝てるのにふわふわで軽くってまるで寝苦しさを感じずにひたすら暖かくそれでいて通気性も抜群で、嗚呼このトラックのニックネーム「羽毛布団ミルフィーユ」とかでもよかったかもしれない。兎に角ふわふわ且つスッキリである。

イデアが豊富にありすぎるのか、一番と二番と三番で全部コーラスのアイデアが異なる。ある意味、局所的ではあるがオリジナルを越えた逸品であると言って差し支えないだろう。あとは、オリジナルと変えたちょっとべらんめぇ口調のメロディー・ラインをリスナーが気に入るかどうかだけだろう。声は澄み切ってるのに、歌い回しはちょっと癖が強いよねぇ。

Delicoにご執心だった事はないので昔の事は知らないが、今後はどんどんヒカルも彼らにリミックスをオファーしてみてはどうか。“シングルのカップリング”という文化がいつまであるかわからないが、あるんだったら是非やってみて欲しい。このトラックこそハイレゾで細かなコーラスの重ね方をチェックしてみたかったな〜。