無意識日記々

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すまほのじだい

2010年代は完全に「スマートフォンの時代」で、若い世代にはPC(のキーボード)を触った事が無い例も珍しくなくなった。ガラケーとPCのニーズの両方に応えたのだからウケるのは当然だが、それにしても一気である。

特に、"暇潰し"の為のツールとしては過去最強クラスで、例えば待ち時間に何をしているかという時に、昔なら文庫本、週刊誌、日刊紙、ポケットラジオやワンセグウォークマンゲームボーイやらDSやらPSPやらのゲーム機、等々色々と人によって異なった選択肢があったが、今やもう全員が俯いてフリックスワイプタップである。新手の中毒症状ともいえる。

まだスマートフォンの出だしはそれもマシだったのだが、ここ1、2年で急速に"スマホゲー"が勢力を伸ばし、一気に"暇潰しの王者の座"に就いた感がある。

そして、スマホゲーの何が今までと違うって、音声が無い事だ。タッチスクリーンを目で見て指で触る、それだけで成り立っている。そんだもんだから、かつてはラジオやテレビはウォークマンやゲーム機やらを使っていた人たちの多くがつけていたイヤフォンというものを、今の人たちは全然着けなくなった。これは大きな変化である。

暇潰しにおいて、音を聴く習慣の割合が大きく減りつつある。この影響力は計り知れない。音声のみのコンテンツを売っている音楽業界は為す術が無い。

解決策としては、メーカーと結託して「無線イヤフォンつきスマートフォン」を売り出すしか無いと思うが、一大プロジェクトとなる上デザイン上の技術的なハードルが恐ろしく高く、それを待つのは得策ではない。一体どうすればよいのやら。

今や、音源を発売する形態は販売対象の世代に大きく左右される。演歌はカセットテープで売られ、ボカロ曲はスマートフォンで動画サイト閲覧で体験される。その振り幅のどこらへんに何を狙って売るのか、だ。

もっと立ち返ってみれば、"暇潰し"以外のコンセプトで買って貰う方法論が必要なのかもしれない。DVDで映画を見るような、「じっくりと腰を落ち着けて観賞してもらう」コンテンツを提供する事も考えなくては。それも広い意味じゃ暇潰しだけど。

桜流しを、あらためてDVDシングルで発売したのは、どちらかというとそっちの発想に近かったと思うが、如何せん5分弱というのは短すぎる。その為にわざわざテレビの電源とステレオの電源を入れDVDを挿入し再生ボタンを押して…というのは煩わしい。これが2時間の映画観賞だというならまた別なのだろうけれど。

今のところ、Hikaruの映像コンテンツといえばライブビデオとPV集だ。「20代はイケイケ!」は特別なDVD化だったとして、兎に角そういう「腰を落ち着けて観賞する」タイプのコンテンツの共有という面では充実していたとはいえない。例えばFL15なら重厚な冊子を読みながらプラチナSHMの音質を堪能する、とかいう楽しみ方が出来ただろうが、その線である。

ライブビデオを出すにはツアーをせねばならずツアーをする為にはアルバムを出さねばならずアルバムを出す為にはシングルを…という先入観を一度取っ払って、一度一からコンテンツの供給方法と観賞・堪能方法の提案を模索するべき時期に入っている。「無音スマートフォン時代」である2010年代中盤に暇潰しのお手軽コンテンツとして音声のみ素材を提供するのは分が悪い。まぁ、もうちょっと待てばまた風向きが変わるかもしれないから、焦る事でもないんだけどな。